この記事はギガントアーム・スズカゼ第六話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561◆ ◆ ◆
「……成程?」
ミスカは片眉を上げる。どうやらこれは。
はぐらかされている、と言うよりも。
試されている、と見た方が良さそうだ。
ミスカBとしても望む所だった。
「確かに可能性としてはゼロではないな」
「だったら」
「だが。少なくともあの場に限っては無理筋な話だ」
画面の向こう、スズカゼの腕部ビームガンがグラウカを照準。射撃。着弾。爆発。
「おや。何故です?」
「キミ自身が最も良く知っている筈だ、ティルジット・ディナード四世」
画面の向こう、スズカゼの腕部ビームガンが更なるグラウカを照準。射撃。着弾。爆発。
「と、言うと?」
「アクンドラ。共和制に移行したとはいえ、それは僅か十三年前の事。現にアクンドラの最大与党は、旧王国時代の王族が議席を持つアクンドラ民治党だ。血筋の力は未だ強し、と言ったところだな。ティルジット・ディナード・『アクンドラ四世』殿」
画面の向こう、スズカゼの腕部ビームガンが更なるグラウカを照準。射撃。着弾。爆発。一際強烈な爆発は、ジットの細面を一瞬白く染める。
「……僕は、政治家ではありませんが?」
「だとしても、ディナードの名を聞けば概ね察しはつく。旧アクンドラ王国、その王家に連なる家系の一つの名とあればな。ウォルタールのような先進技術の塊を所持出来ている理由もそれだろう」
ここでようやくミスカBはオレンジジュースを一口含んだ。背後では一郎が盾持ちのグラウカに苦戦を強いられていた。
「さて。そうなるとこれまでの状況に大きな矛盾が生まれる。何故そのような貴人が、ロクな護衛も無く生身でギガントアームの調査をしており、あまつさえ敵対国の人間と共に同じ機体へ乗り込んだのか?」
「母国での立場が弱いからでしょう。それなりのチカラがあるとは言え、所詮傍流の七男ですからねえ。あるいは単に趣味とか」
「成程。実に含蓄のある意見だ」
爆音。また一機のグラウカを撃破するスズカゼ。だが二人の耳には届かない。