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ギガントアーム・スズカゼ 第六話 製作途中版②

この記事はギガントアーム・スズカゼ第六話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561

◆ ◆ ◆

「……ん?」

 そうして、一郎は発見する。
 古びた六畳間の一角。場違いに巨大な画面のテレビ。
 その前へ座布団を敷いて座っている自分自身に。

「……えっ?」
「いやーもー長かったーめんどくさかったなー」

 声の方向へ振り向けば、ちゃぶ台の向こうに見知った顔が一人。ティルジット・ディナード四世が、軍服の襟を緩めながらあぐらをかいていた。

「え。えっ?」
「気を散らすな加藤。来るぞ」

 今度は真横から声。見やれば、そこにはいつの間にか同じく座布団に座るミスカ・フォーセルの姿。折り目正しく正座する彼は、どういう訳かゲーム機のコントローラーのようなものを持っている。
 そして一郎も気付く。自分も同じコントローラーを持っている事に。

「何これ!? どういう事!?」

 全く訳が分からない一郎だったが、ゲーム機という事で反射的に反射的にテレビ画面を見る。映っていたのはゲームの画面、ではなく森の中に立つ敵機、グラウカの姿。

「これは」

 その意味を認識した瞬間。
 一郎は、吸い込まれた。
 意識が。
 画面へ。
 比喩でなく。

「これは!?」

 拳を握る一郎。鋼の腕が、スズカゼの五指が、それに応える。
 今度こそ、先の戦闘と同じだ。一郎の意識はギガントアーム・スズカゼの躯体と、完全同調状態にあった。
 そして、だからこそ分かる事が二つ。
 一つはセンサー。この場を目指して近づいて来る熱と魔力の反応。即ちグラウカの部隊。スズカゼは今これに相対している。
 もう一つはシステム内部。スズカゼの魔法ストレージ内に作られた、ごく狭い仮想空間。一郎は先程この場所に居たのだ。
 いや、厳密には今もそこに居る。機体内部の仮想空間なのだから、意識の置き場が変わっただけなのだ。
 だからミスカとジットがこの仮想空間に居たのは、何もおかしい所は――。

「――いや! やっぱおかしいって!」

 叫び声とは裏腹に、滑らかな駆動で半身になるスズカゼ。直後、胸部装甲直上を弾丸が掠める。グラウカのアサルトライフル射撃だ。
 照星は当然の如くスズカゼを追尾。だが第二射が放たれるよりも早く、スズカゼのスラスターが唸りを上げた。
 跳躍するスズカゼ。スラスター推力の加味によって高く舞い上がるその軌跡を、グラウカの射撃はなぞる事しか出来ない。
 第三射。スズカゼは左に跳躍回避。
 第四射。スズカゼは右に跳躍回避。
 第五射。スズカゼは、今までより更に高く早く飛び上がる。
 このままスラスター方向を調整し、スズカゼは空中で回転。推力調整。落下軌道、及び姿勢の変更。右足を突き出し、完成するは急降下跳び蹴り。
 その着弾点には、当然ながら第六射を狙うグラウカの姿があり。
 しかして引鉄が引かれるより先に、突き刺さったスズカゼの一撃が敵機を爆散させた。

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