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ギガントアーム・スズカゼ 第六話 製作途中版①

この記事はギガントアーム・スズカゼ第六話の書き上がった最新分を掲載しているものです。
これまでの話は下記リンクから読めます。
https://kakuyomu.jp/works/16817139556247117561

◆ ◆ ◆

 轟音と共に射出される巨大な刀。ギガントアーム・スズカゼ武器形態。
 その柄へ、一郎は手を伸ばす。掴む。
 掌中へ返る固い感触。気付けば一郎の身体は、先の戦闘で見た青色の巨体となっている。己の意志で、己の身体をギガントアーム制御用の形態へと置き換えたのだ。
 更に一郎には分かる。己の中に二筋、自分の物ではない魔力のラインが走っている事が。
 片方のラインの名はミスカ・フォーセル。一郎が巨大化する折、便乗して一体化して来た二人目のパイロット。
 ミスカは一郎の腕を渡る。スズカゼの柄へアクセスし、己で設定したパスワードを入力。堰き止められていたシステムが解放され、一郎はスズカゼの変形機構を掌握。同時にもう片方のラインが繋がる相手、即ち三人目のパイロットことティルジット・ディナード四世へ呼びかける。

「準備は良いかい、ジットくん!」
「大丈夫です! 重力制御魔法は問題なくコクピットを守ってます!」
「分かった! じゃあ行くぞ――」

 一つ、咳払いをした後。
 一郎は、昨日のうちに決めていた呪文を、変形を己の意識下に置くためのキーワードを叫んだ。

「――モード変換!」

 一郎の声を皮切りに、三方へと分離するスズカゼ。刀身の上半分、下半分、鍔から下の三部位へ分かれたパーツ群は、青く巨大な一郎を中心として衛星のように浮遊回転。変形開始。
 この時丁度左前方に居たグラウカがアサルトライフルの掃射を浴びせたが、スズカゼにも一郎にも届かない。パーツ群から放たれる魔力の一部が、半球状の防御フィールドを作って変形を守っているのだ。これにより、スズカゼの変形はつつがなく進行する。
 まず刀身の上部分。刃というには相当に肉厚だった鋼が展開し、形を変え、現れるのは巨大な上半身。
 次いで刀身の下半分。刃というには相当に肉厚だった鋼が展開し、形を変え、現れるのは巨大な上半身。
 最後に鍔から下の部位。柄部分が縦二つに分かれ、形を変え、現れるのは巨大な頭部とバックパック。
 かくて形を変えた三つのパーツは、再び一つになるべく寄り集まる。その集合点には、巨大な青い巨人がおり。余剰魔力による強烈な閃光が周囲を焼く只中、パーツ群は巨人を鎧うべく合体を開始する。
 まず青い巨人の腰から下に、スズカゼの巨大な下半身が重なる。一体化。魔力が通い、脚部スラスターから光が噴出。
 次に青い巨人の腰から上に、スズカゼの巨大な上半身が重なる。一体化。魔力が通い、五指が拳を握りしめる。
 最後に青い巨人の頭部に、スズカゼの巨大な頭部が重なる。一体化。甲冑でいう面頬に当たるマスクが遮蔽し、額のアンテナが展開。赤いツインアイがぎらと光る。こうした一連の変形合体は、光が収まるまでの数秒間に完了している。
 光が晴れると同時、響くは大地を踏みしめる巨大な振動。ばさばさと逃げていく野鳥には目もくれず、グラウカは周囲の僚機へ信号を送る。
 そうする合間にも、鎧武者に似たシルエットを持つ青色の機械巨人――ギガントアーム・スズカゼは、膝立ち状態からゆるりと立ち上がり。

「ギガントアーム・スズカゼ! 戦闘モード、移行完了!」

 朗々と叫ぶその声は、間違いなく加藤一郎のものであった。

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