唯月湊

近くて遠い、ささやかなひとときの物語。 ✻✻✻✻✻ 文披31題2023に今年も参加します。7月中のみ更新します。 去年よりは多く、できれば完走を目指したいなと思います。

妖精郷の魔女が死んだ。 命の天秤を操るという稀代の魔女は、一体どのような人物だったのか――。 死の知らせをもたらした異国の死神に誘われ、ひとりの学者が彼女の物語を蒐集する。 こ…

何の変哲もない日常に、少しのファンタジーを混ぜ混んだような掌編集になります。 7月いっぱいがんばりますが、毎日更新はちょっと難しいと思います。 掌編は続いたり続かなかったりしま…

霊峰イスベルクの麓の町、トラッキルス。多種多様な種族が暮らすその町に、一軒の魔道具屋がある。あれば便利、なくても困らない魔道具を売るその店だが、とある合言葉を知るならば、そこは「…

大学でオーケストラサークルに入っていた篠は、卒業後しばらく経って誘われた演奏会へと参加する。それは、長く秘めた思いを吐き出すそのために仕立てられた舞台だった

月籠の夜、夜空の下で目を覚ました青年トモリは、己の記憶を失っていた。覚えていたのはひとつだけ。誰かと海へ行く約束をしたこと。青年は傍にいた少年、ニシェと共に海を目指す。 その旅…

小さな港町で細工師をするイーリスには、ひとりの同居人がいた。声を失った女性、名をシルフィエ。 言葉こそ優しいものがかけられようと、その心の内はごまかせない。イーリスはシルフィエを…

冴え冴えと蒼月の照るその街には、新芽の芽吹く春が来ない。この街は夜の帳に包まれ、凍える冬が支配していた。 街の篝火を灯す役を担ったペタ耳の獣人ラルガ。彼が出会ったのは、森向こう…

何の変哲もない朝、灰色の気分を抱えたままの出勤時。瀬尾みなみは不思議なものを見つける。それは『あなたのユメ　買います』という看板。ふらりと惹かれたその先で、彼女は不思議な店主と出…

小さな町の片田舎、青年はひとりの老婦人と住んでいた。 暑い夏の盛り、老婦人はきまって縁側で手紙を読む。返事も書いているようだが、その手紙を青年は出しに行った覚えがない。 不思議に…

赤いコートに大きな鞄。帽子を目深にかぶる青年は思いを運ぶ郵便屋。鞄に詰め込まれた荷物は手紙だが、依頼人は人にあらず。引き受ける彼もまた、人にあらず。 さて、今日の配達はどこだろ…

両親の都合で小さな港町に転居した女子高生、咲希は真夜中の屋上で「魔女」と呼ばれる女子高生に出会う。 長く雨が降らないその町で、咲希はじきに行われる祭りの巫女に選ばれる。 古い因習…

音大付属高校の音楽科に通う女子高生、都筑優香。その耳にある日飛び込んできた、透明な歌声。向かった先にいたのは、同じ学徒の少年だった。 ただ歌を歌い続けたかった彼と、音楽に命を賭…

彼は海を知らない。 旅人になりそこなった青年の、海の町での商いの話。 お題「ローストされた」

しとしとと降る雨の中、しくしくと女が泣いていた。 これは、雨の中に語らう女と老女の、ちいさなちいさな物語。

螺旋階段を下へ下へと降りた先は、人類の叡智を集めた書物庫が広がっていた。 領地の娘、オフィーリアと、彼女に仕える機械人形の執事、リコルド。 夜ごと同じ会話が繰り返されながら、彼…

司祭、レオノーラは旅をする。 声を出さずに言葉を綴り、謳う祝詞で呼ばうのは眠りの神。 死者に安らかな眠りを、そしてどうか祝福を。

自動人形、リトルトイ。 子ども用の旧式人形だった彼は、誰かに引き渡されることもなく、工場にて新型の人形を作る手伝いに従事していた。 そこへ、ひとつのエラーが起きる。 それを解消す…