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本人はピュアなつもりのいけ好かないオヤジ―「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「十」を投稿しました!

平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「十 翠令、円偉の本を読む」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927860709581705

「高貴な野蛮人」という言葉があります。

Wikipediaによると
「高貴な野蛮人(こうきなやばんじん、noble savage)とは、創作物におけるストックキャラクターで、先住民、アウトサイダー、未開人、(哲学的な意味での)他者、といったものの概念を具現化したものである。彼らは文明に汚染されておらず、従って人間の本来の美徳を象徴する。様々なフィクション作品や哲学書に登場することに加えて、そのステレオタイプな偏見は初期の人類学の研究においても多用されていた」

また、「現代における『高貴な野蛮人』の描写」=「工業化されていない異国情緒あふれる人々をロマンチックに理想化したような描写」として、「ダンス・ウィズ・ウルブズ」が挙げられています。

私がこの小説において、円偉の「鼻持ちならなさ」として示したいのは「文明化されていないところに人間の真実があるのだというステレオタイプな思い込み」です。

実は……円偉というキャラは、私が実際に出会った人物がモデルとなっています。

以下は、その人と接していて不快な思いをしたという話なので、ネガティブな話がお嫌いな方はスルーしてくださいませ。

彼は、私が参加しているある集まりのメンバーで、壮年の男性です。
そして地方の小さな出版社から紀行文を刊行しました(一応、商業出版ですが……特徴のある生い立ちなので、そんな境遇の人が書いたものだからという理由で出版されたという側面も強いように思います。純粋に内容が優れているかというと……以下に述べるように割と陳腐なので、私はクオリティに疑問を感じています)。

その人が集会に持って来て「手売り」されたので……断るのも角が立つので購入しました。
そして読み始めたのですが……。半分くらいで読むのに飽きましたw

何がつまらないかって、円偉の本みたいだからですw

その人物は、日本国内のいわゆる田舎やアジア各地を旅行して回っています。
ただ、その紀行文の内容は……。
漁村に行っても山村に行っても、山岳地帯のネパールに行っても、海に浮かぶインドネシアに行っても、結局書いていることは同じです。

「現地の素朴な人と心温まる触れ合いをした」という体験談と、不親切な人間への憤懣と、そして文明への嫌悪です。

例えば。

その土地の人が暮らすのに便利だからとアスファルトの道路を作ったんだと思いますが、彼は「田舎の情趣が損なわれた」と不満を隠しません。

関西人なので阪神淡路大震災にも思う所があったらしいのですが。
瓦礫が撤去された土地に近代的な建物の工事が始まる光景を指して、「街を再びコンクリートジャングルにしようとしている。愚行が繰り返されようとしている」と評します。
普通は「復興」と呼んで喜ぶもんじゃないかと思いますが、彼は悲憤慷慨して「まだ分からないのか」と叫ぶのです(何様だ?)。
↑ちなみに私は神戸出身なので不愉快です。

ご本人は身体的には健康なので旅先では野宿も厭わないとはいえ、京都で普段住んでいるマンションでは普通に冷暖房使ってるようなんですけどね(京都の夏をエアコン抜きでは過ごせません)、それなのに、なぜ他人が文明を享受することにそこまで否定的でいられるのか分かりません。

SDGsさえ配慮してれば、安寧と豊かさを追求することは人間として当然であり、そうして文明は築かれてきたのだと思います。
彼にとっては唾棄すべき営みかもしれませんが、私は彼の拙劣な文明批判に共感できません。

で、その彼の好みを延々と繰り返されると……飽きるんですよ、読んでて。
いくら読んでても、訪れた先のそれぞれの山村や漁村、ネパールやインドネシアといった国々ごとの違いもいっこうに分かりませんし。書き割りのような背景が次々変わるだけで、要はそのおっさんの好き嫌いしか書かれていないんですから。

あと、本人は美談のつもりで書いたエピソードが、現時点での倫理観では微妙な代物で……。

インドを旅していて、アウトカーストの若い女性をインドの人たちが差別している場面に遭遇したので、涙混じりに「人間は平等だ!」と差別する人々に訴え、そしてその若い女性に感謝され、以来インドに旅行するたびにその女性の家に泊めてもらって歓待されている――のだそうです。

確かに人間は平等ですし、その女性が感謝しているんなら他人が何か言うことではないですが……。

「先進国の壮年の男性が、後進国(あえてこの表現を使います)で虐げられていた若い女性を救いだし、それによって彼女から尊敬と感謝を捧げられる」という構図……。
これはかなり植民地主義的というか、男性中心主義というか……やってる本人は己の美談に酔えて気持ちいいかもしれませんが今時どうなんでしょう?

もし名のある文筆家がこんな手垢にまみれた「一見差別に反対しているようで、実は根深い差別意識が漏れ出してる」陳腐なエピソードを出版してしまったら、問題になるでしょう(ツイッターで炎上とか、大使館やフェミニズム団体から苦情が来るとか)。
書き手が有象無象の無名な人物の著作なので特に問題にならずに済んでますけど。

また。
この人物は若い頃に地方の国立大学に合格したそうで、回りくどい言い回しで取り繕いながら、結局それを自慢してくるんですよ。
この人の大学受験の頃は「一期校」「二期校」というのがあって、彼が合格した大学は東大京大の併願先だったのだそうです(私は世代が違うので制度はよく分かりませんが、彼が自慢してるのは分かりますw)。
一方で、そんな自分は「アジアを訪れてもインテリを相手にするのではなく、英語も喋られへんような現地の素朴な人と触れ合うのが好きやねん」とのこと。

この台詞は、私との会話の中で私に向けられたものなんですが……。その文脈は……。
私は都会の国立大学の院生崩れで、今でも話題によっては小難しい喋り方をする癖が出ることがあります。それが彼には気に入らない。
「さっきから貴女は借り物の言葉で喋っている」「偽の言葉を使っている」「嘘を語っている。本当の話をして欲しい」としつこく繰り返し、そして「僕はな、スーパーでレジ打ちしてるような女の人とお天気とかの世間話をして触れ合うのが好きやねん」と、私との話題と何の関係のない彼の好みを一方的に押し付けられましてね……(知らんがな!)。

今、接客業の女性について社会問題になってますよね。レジとか窓口とかで仕事してるのに、仕事と関係ないコミュニケーションを求めてくる男性客。
(男性とのコミュニケーションが本業のホステスさん並みに優しい対応しないと、この手の男性客って逆ギレするケースも多いんだそうです。「せっかく俺が話しかけてやっているのに」って)。

レジの人だってお客がいなければいないでレジの周りを消毒したり、バックヤードの片づけをしたり、帰宅後の家事の段取りを考えたり、済ませておきたい用事はいっぱいです。貴重な時間を見知らぬオヤジとの世間話に費やしたくないでしょうよ……。
かといって店の客だから無碍にもできないし。

でも、その男性は「インテリじゃない、スーパーのレジ打ちの女性と『触れ合ってる』自分」にご満悦。

この「錦濤宮物語」という私の小説は、先に翠令と佳卓の話や白狼の話が浮かんで来て、次に、話の展開上「悪役」が必要になるので円偉を登場させたという順番で出来上がりました。
そして、まさに「どんな悪役を登場させようか」と構想を練っている時期に、この人物の本の出版と私に向かって「借り物・偽物・嘘」と決めつける出来事が立て続けに起こったのです。
そこで「よし、私の小説の悪役のモデルはコイツでいこう!」と方針が決定したのですw

私は根が善良なものですから(←本当かぁw)悪役を書くことに慣れておらず、話を作るのに苦労してたんですけれども、実在の人物をモデルにすると一気に楽になりましたよw

ですから、観察できる範囲にいてもらっても良かったのですが(多くても週に一回顔を合わせるか合わせないかくらいの頻度なので、腹が立ってもメリットの方が大きそう)。
私じゃない他のメンバーともトラブル起こして来なくなってしまいました。
「本人はピュアなつもりのいけ好かないオヤジ」の典型例であり、この人の言動を記録しておけば、今後小説を書く上で何かと便利そうな気がしていたので少し残念です。

まあ、その紀行文の中の彼が何が嫌いか述べた箇所を読んでても、これまでもあちこちで軋轢を起こしてきたトラブルメーカーだったことが窺えるので、当然の帰結だったのでしょう。
その人の本は手元にあるので今後の参考にしようと思います。
(そういや、「著者割引で100円値引きして『あげる』」と上から目線で恩着せがましく買わされたってことも今思い出しました。ああムカつくw)。

ええと、今回の写真はどうしましょう……。

そうそう作中の「志麻国」は今でも伊勢志摩と呼ばれる、真珠の名産地「志摩」のことです。天然の真珠はとても希少な物でした。

【参考】

三重県のサイト(真珠はアコヤガイから取れるものが良いという説明)
https://www.pref.mie.lg.jp/suigi/hp/78567017349.htm 

なお、「アコヤガイにはリアス式海岸などの環境がいい」ことについては、真珠取扱業者のサイトなどにかかれています。(カクヨムで物品販売サイトのURLを貼るのは禁止されているようですので、「真珠」「環境」などの語で検索してみてください)

海女の漁については枕草子「うちとくまじきもの」で述べられています。

今回の写真は私の手持ちの「枕草子」(新編日本古典文学全集18)の該当箇所の写真に致します。

真珠が価値があるというこの小説でのこの話は、後々にも登場します。心に留めていただければ幸いです。

あ、それから。
文中に出てくる中国語はGoogle先生にお願いしましたw
現代中国語だけだと簡体字になってしまうので、繫体字を参考にしております。

どうか今後の展開もお楽しみくださいますよう。

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