平安ファンタジー小説「錦濤宮物語 女武人ノ宮仕え或ハ近衛大将ノ大詐術」の「九 翠令、気遣われる」を投稿しました!
https://kakuyomu.jp/works/16816927860647624393/episodes/16816927860709543294佳卓と翠令にちょっといい雰囲気が生まれます。
少女漫画なら点描が背景に描かれる場面でしょうか。
佳卓は女性の麾下を持つのが初めてなので、対応にちょっとばかり苦慮しているところです。翠令が気落ちしているのを慰めようとして、それを「男君だから」と理由付けたのですが照れ臭くなって、「上官だから」とさっさと立ち位置を変えてしまいます。
翠令も、山崎津以来佳卓を「風変わりな上官」としか見ていませんから、そっちの方が受け入れやすい模様。
ただ、「気障を気取りたいけれど照れ臭い」佳卓に人間味を感じることになります。
この二人はこんな感じがしばらく続きます。
なお、今回、佳卓が多少遠慮しながらも後宮の昭陽舎に入ってきます。
男性が後宮に出入りできるかどうかについては、資料とした「知っ得 後宮の全て」(國文學編集部)の7頁に日本の「後宮の特色」の2つ目に「男子禁制ではなかったこと」が挙げられています。
少し引用しますと……。
「②男子禁制ではなかったこと。この点では、中国の後宮やトルコ帝国のハレムとも異なっていたし、また、后妃らは適宜、里第に退下することができ、後宮に閉じ込められることはなかった。『枕草子』や『四条宮下野集』にいくらでも見られるように、公卿は殿上人は自由に後宮に出入りし、后や女房たちと歌や管弦の遊びを共にし、すこぶる自由で文化的雰囲気が満ちていた」
この文章を書かれたのは角田文衛さん。ご存じの方も多いでしょう。むちゃくちゃ大御所の偉い先生で、私も学生の頃ご著書を読んだことありますよw
そのような「自由で文化的な雰囲気」の中で過ごしてきたので、佳卓は風流人でもあり、女君の装束にも一家言あります。
ただ、佳卓はそうでも、この小説の書き手であるワタクシ鷲生があまり装束に詳しくない……w
手探りで色々調べてますが、平安時代の装束を始めとする文化に詳しい方は本当にとことんお詳しいので……。そんな方々のお目に止まって、ボロが出ないよう大雑把に描写を濁しております。ええ、不勉強でスミマセン……。
自分が物知らずなのは自覚がありますので、色々調べていますし、博物館などに出かけています。
そして、不勉強なりに、自分がこの目で見たとか、納得がいったという内容を用いることにしています。
あちこち出かけたミュージアムの中に「風俗博物館」というところがあります。平安時代の風俗、とくに装束を人形に着せて再現して見せて下さる博物館です。
平安時代の装束を知りたいとなると、外せないミュージアムです。
そちらの展示を見に行ったところ、四季の襲の代表例が展示されてまして。夏の襲として飾られていたのが「白撫子」でした。
そこで、夏の襲として「撫子の襲(白以外も含めて)」を小説に登場させることにしました。
もちろん、可愛らし女の子を「なでしこ」と呼ぶ風俗とも対応した設定です。
梨の典侍が「まだ早いかと」と言っていますけれども、作中では桜が終わった頃なのでそろそろ「撫子の襲」を用意してても早くはないかなあ……という気もしてはいます……。
ただ、他のもっと夏真っ盛りをイメージさせる襲だと、私が実物を見た経験がなく、十歳の少女に「可愛い女の子=なでしこ」という意味を込めたというイメージも活かせないので、ここでは「撫子の襲」としております。
もっと言えば、成人していない子どもの装束は「汗衫」というものがあるそうなのですが……。これも、私が作中で使いこなせるほど詳しい知識が得られなかったので、ここではあまり大人と変わらない、いわゆる十二単に近いものを考えています。
この小説全体を通じて、「裾の長い衣装を着て御簾の中でじっとしている御所風の文化」に「どう溶け込むか」或は「どう抗うか」というのがテーマなので……。
ここでは、姫宮が「動きやすい燕服」だけでなく「御所風の装束」も着るようになったのだと単純に読んで頂ければと思います。
「縹色」は今のブルー系統の色です。
日本の伝統色を説明するサイトでは深縹について「『深縹』は、平安時代から鎌倉時代にかけてその濃く勇ましい色合いから、男物の衣装として流行しました。また平安中期より『紺』とも呼ばれるようになります」と書かれています。
https://irocore.com/kokihanada/この情報に基づいて、本作品では「あまり女君が着ない色」という設定にしております。
あと、「尾治国」はもちろん「尾張国」です。今の名古屋近辺です。
正智というキャラは、私の好きな十二国記の「正頼」からイメージしました。
次回は円偉が登場します。
翠令は円偉に違和感を覚えるようになるのですが……円偉という存在が話の展開の軸です。
それから、白い犬のハクも終盤までちょくちょく出て参ります。
どうか今後ともご愛読賜りますよう。
【参考】
「知っ得 後宮の全て」(國文學編集部)
伝統色のいろは-Traditional colors of Japan-
https://irocore.com/kokihanada/