面接
僕は、林業組合の事務所にいる。向かいには筋肉の塊という定番的な理事長が、ソファーに埋まっている。胸には「組合長 杜」という名札が必死に胸につかまっていると言ってもいい。素直に太っているとか血液検査したいなんて思ってないけど、妄想は捗りそうだ。
「それで、君はなぜこんなところに来たんだ?」
「正直に申し上げると厚生省の奨学金免除プログラムに応募したら、こちらの村に赴任するようにという連絡をいただきまして・・・」。
これ以上は素直に言えない僕だった。嫌々だのってのは全部封印して、とにかく奨学金という縛りから脱出したいのが本意ではある。しかし、そのためには最低で2年。この場合、赴任先からの何らかの書類を書いてもらわないといけない。内容は知らされていないけれど噂話では奨学金免除相当該当者推薦状などという長ったらしい表題で始まる文書だそうな。
「前任者も似たような感じで赴任してきてね、2年で退任していったんだよ。やってのけた結果は完璧と言っても差し支えない。
書類も慢性病を患っていた患者も完璧に治療しての退任だったからね。止める理由が見当たらないままで住民全員の総意で引き止めたけど治療する対象がないのに雇い続けるのは予算の無駄遣いじゃないかと言われれば反論もできない。ま、そんなところだ。
おっと喋りすぎたか。君の診療科目はなんだ?」
「外科と内科です」
「いわゆる標準的な感じだな。いつから赴任できる?
下宿先は、川辺荘の離れを使ってもらってもいいぞ。あそこなら、中廊下を通ると診療所まで1分もかからん。その代わり急患とかの場合はしっかり働いてもらう。当面は患者がいないので前任引き継ぎという形でカルテやら日記を読んでもらって結構だ。日記に関しては前任者から、詳細は日記を読んでもらっても良いと許可をもらってる。」
「それでは、11月からでよろしいでしょうか。いまの下宿を引き払ってからになりますので」
「じゃ、それで頼む。引越しに関しては副組合長の林に頼むと適宜やってくれる。
林さーん、頼んだ」