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『飛散のあわいに』への感想

自主企画、【感想】文学性の高い作品、集まれ!【書きます】に参加させていただきました。

*自主企画返信用の、ノート投稿です。
 好きな台詞を書いているので、若干のネタバレありです。

③好きなキャラとしては、翔平。(行動力があり、とことん一途)
*好きな台詞 (翔平)
「ああ、俺も女の子だったらよかったんかな。俺、宏奈のこと信じてたよ。例え裏切られても、何回でも信じるよ。俺やってしんどいんやからな。こんだけ好きやのに、なんで宏奈はいっつも遥月ちゃんばっかりなん。ちょっとくらい、俺にも返してくれたらええやんか」

④8話。(8話完結)
⑤想定読者:ガールズラブに興味のある(もしくはリアルな同性愛の実態をよく知らない)30代の男性。

よろしくお願いいたします。

2件のコメント

  • 企画へのご参加、ありがとうございます
    遅くなりましたが、感想レポートです

     本文に入る前に、お断りさせていただきます。
     「私小説」とのタグの通り、本作はウワノソラさんの実体験が強く反映された作品であることでしょう。
     後述する批評は、物語論として見たさいの、構成や表現に対してなされたものです。ウワノソラさんやその他の方々の、思考や行動に対する批評ではありません。
     辛口になりますが、ご容赦ください。

     さて、総評です。
     作文技術には全く問題がないため、文章を読んで理解すること自体には、難儀しませんでした。
     しかし、一方で、エピソードの具体性に欠けていたために、登場人物たちの台詞や行動に説得力を感じられませんでした。

     全体を通して、一作品として完成させられるほどには、(私小説とのタグが本当であるとしたら)青春期の思い出を俯瞰的に見られていない印象です。

     例えば、主人公は自身のことを「ひよわでとろい」と評していますが、本作を読む限り、主人公の印象は、時折エゴイスティックながらも、それを自覚して抑える理性もあるような、わりと賢い、しかし、思考の方向性がやはりエゴな女の子です。
     「ひよわ」や「とろい」らしいエピソードが見当たりません。それらの性格は自己申告されるのみで、読者にとっては、納得できる具体的な描写や、エピソードがないのです。
     翔平に対する「行動力」も読み取れません。

     書き手は、登場人物の性格やキャラクター性を把握しています。そのため、それを単語にて「説明」しようとしてしまいます。
     しかし、読み手は、登場人物のキャラクター性を「描写」の積み重ねにて「構築」していきます。
     もし、主人公を「とろい」設定にしたければ、周囲の人間から「とろい」と評されるだけの具体的な事例=エピソードを作中に挿入してほしいと思いました。

     本作は、「説明」が過剰で、「描写」が足りていません。

    【三年になったばかりの春、ひょんなきっかけで私が遥月に心酔しかけていることを翔平に知られた】

    【彼女がインテリアコースで作成した木製の照明は丁寧に木を組み合わせて作られていて、ひときわ目を惹く存在だった】

     そこを書いてほしいんですよ。
     どんなきっかけで知られたのか。主人公がうっかり何かをしたのか、翔平が洞察力を働かせたのか。その場で気付かれたのか、積もり積もった違和感を打診するように明かされたのか。
     遥月の作品は、どのような部位に、彼女のこだわりを感じさせたか。それは、彼女の性格から想起されるものか、ギャップを抱かせるものか。主人公の目に、特に惹かれるものがあったのか、同級生の中でも群を抜いて技術やセンスがあったのか。

     それらの描写を、いかに遥月に心酔しているか伝わるように書くことで、

    「なんで宏奈はいっつも遥月ちゃんばっかりなん」

    との台詞が活きてきます。

     おそらく、ですが。プロットの詰め方が不十分なのだと思います。
     設定は十分に作れていると読み取れますので、その設定を象徴するような、具体的に描写するようなエピソードをも作ってみてください。

     設定→逆算的にエピソードを決める/取捨選択する

     プロット上に存在する設定&エピソードは全て、作品を簡潔に導くための一手となるように、不足しているものは補い、不必要なものは捨てられると良いでしょう。

     とはいえ……!!!
     私小説ですからね。削れ、不必要だとは、尊大な要求ですとはわかっておりますので……。
     あくまで、魅力的なキャラクター性を描くための一方法とお考えください。

     さてさて、あまり綺麗にはまとまっていませんが、これにて。
     本作を描くにあたって、穏やかでない心情にもなったことと推察します。思春期の、幼いが故に自制も効かず、自我がぶつかり合う見苦しさ。これを描こうとした試みには、大いなる敬意を抱かされました。
     思い出の一端をのぞかせてくださり、ありがとうございます。
  • 小鹿様
    非常に丁寧で率直な感想、ありがとうございます。
    具体的に指摘くださったため課題がありありと浮き彫りになり、勉強になりました。

    知り合いの小説交換仲間に読んでいただくことはあるんですが、段々と評価してもらっても甘くなるというか…恐らく、気になることがあっても厳しいことばかりは言えないという風潮があるのかな、と今回の意見をいただいて感じました。
    とはいえ、指摘されないと気付けないこともありますし、指摘されることがやはり改善の近道なんですよね。
    小鹿様の忌憚なき意見に感謝です。

    今回、原稿用紙30枚の作品(未完結)を文学フリマの冊子掲載用に「原稿用紙26枚以内」に収め、完結させたがゆえに話の進行がかなり駆け足となってしまいました。
    作品の長さに応じた設定というのも大事なんだろうなと感じました。あと、長い作品を書くのにも慣れが必要なのかなと。

    ・少し長めの作品を書くには、プロット作りが大切ということですね。またプロット作りも練習してみます。
    ・説明ではなく、描写の積み重ねで読者を納得させる…また意識して取り組んでいきたいと思います。描写不足は他の方にも指摘を受けている部分なんですよ。もう少し、加筆して描写に力を入れてみます。
    ・「ひょんなきっかけで遥月に心酔しかけていることを知った」のくだりも、書いてはみたんですが字数の制限があるで削ってしまったんですよね…。
    ・「ひよわでとろい」も、いきなりそれだけ出てくると読者は違和感を感じてしまう部分だと思いますので、修正します。
    ・描写、具体的なエピソードを加筆をするにはどこを削ったらいいのか再度考え直してみます。

    細部に渡り、ありがとうございました。
    具体的に説明してくださることで、腑に落ちるものがありました。
    多大なお時間と労力を割いてくださったことと思いますが、小鹿様に読んでいただけて私の背筋が伸びました。本当に、貴重なご意見の数々に感謝です。

    また小鹿様の作品も拝読しに伺いますね。
    この度は素敵な企画をありがとうございました。

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