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『梨子割』完結しました あとがき(文末に赤裸々プレゼン付)

 本日、『梨子割』が完結しました。
『梨子割(なしわり)』
https://kakuyomu.jp/works/16818023212696611765

 ものすごく僭越なことをいうと、『梨子割』は「文学であれ」と念じて書きました。とても身分不相応なことを言っている自覚はあります。稚拙なところもあるのはわかってます。まだまだなのはわかってます。でも、これは、歴史小説で、エンタメで、文学のつもりです。

 この作品に込めたかったテーマはたくさんあります。
 性、男性性、女性性、暴力、罪と赦し、昭和という時代、戦前、または戦後という時代……そのほか、いろいろ。

 それらについて語り出すと止まらなくなるので、ここではやめておきます。ただ、これだけは、ということをあえて書くとしたら、こういうことです。

 これらのテーマのなかには通常の生活では、腫れ物に触るように扱われるセンシティブな事柄もあります。
 でもわたしはこの作品では躊躇なくそういう事柄にも触れ、露わにしてみたかった。そういうことは、創作でしかできないことだと思うので。

 つまりは、創作という表現の可能性を広げてみたかった、ということです。
 そのためのわたしなりの模索を『梨子割』では行った、そんな感があります。
 だから、そういう意味で、この作品は「文学」であれと望むわけです。

 あと、これは他の作品にもいえることですが、わたしは結局、「正しい人間」を書きたいわけではないと改めて思います。あくまでその人間がどう生きたか、それを書き記したいだけで、彼ら彼女らが正しかったのか、それとも間違っていたのか、そういうことは提示しません。するとしても、それは読み手の解釈に任せたいというか。
 あくまで、今作でいうなら、読んだ方が良太郎と邦正の生き様になにか感じることがあれば、もうそれでいいんだと思っています。

 今年で執筆を始めて四年になります。書きたいジャンル、得意なジャンルがわからないまま悩みに悩んで、今日まで来ました。
 そのなかで「なにより人間が書きたい。なら、どのジャンルでもいいんじゃないか」と考えた末にチャレンジしたのが今作でもあります。

 現実世界が舞台の歴史物ということで、今までにない苦労がありました。でも、とても得難い経験となりました。ここを礎にまた新しい世界を探しに行ける、『梨子割』からはそんな勇気をもらうことができました。

 また、読んでくれた方がコメントやTwitterでご感想を述べてくださったのがとてもありがたかったです。その度にわたしの中でも、作品に対する解像度が上がっていきました。
 いま、初稿改稿をしているところですが、それはみなさまのご感想なくてはできなかったことだと書き進めるたびに思います。このコメントしにくい作品に、ほんとうにありがとうございました。もっと面白くしてみせます。

 そして、どんなかたちであれ、それをまたみなさんに見ていただく機会を設けたいです。その日をどうぞ楽しみにしていただけたら嬉しいです。

 最後にスペシャルサンクスをひっそり。

草森ゆきさま
 草森さんの自主企画にお出しした短編なしには書きだすことも産まれることもない作品でした。自主企画に出した、短編『絡まる』があってこその『梨子割』ですし、良太郎と邦正です。ほんとうに得難い機会をいただいたこと、感謝しています。

宮田秩早さま
 『絡まる』にいただいたレビューで、作品のなかの「時代性」に言及していただけたことに深く感謝します。その視点を得られてこそ、長編化することができました。

埼玉県白岡市立図書館さま
 ほんと、ここに書いても届くことはないでしょうから、意味ないんですけど(苦笑)執筆にあたり資料をたくさん教えてくださり、本当にありがとうございました。変な物語のモデルの地にして、ほんとごめんなさい。でもあれらの資料がなくては一文字も書けない作品でした。

近所のカフェ(複数)
 暴力的なシーンの多い作品でしたから、執筆に行き詰まることもありました。そういう時はあちこちのカフェを梯子して、気分転換しながら書きました。ケーキを頬張り、コーヒーを啜りながら、すごい顔してスマホに一心に向かっていたと思います。その際はお世話になりました。おかげで書き上げられました。

 ほんとうに、読んでくださいましたみなさま、お気に留めてくださったみなさま、ありがとうございました。
 たまにでも、良太郎と邦正のことを思い起こしてくれるとつるはとっても嬉しいです。
(画像は梨ジュースで完結祝の乾杯の儀)

2024.5.16
つるよしの


【以下、赤裸々プレゼン】
 わたしは仮に今死んだら、この作品で世間に覚えられたい、と本気で思っています。
 今作は夏の某公募に出すつもりで書いたので、7月はじめくらいまではここで公開してるんじゃないかと思います。
 なのでどこかのどなたか、「これは拾いたい」と思ったらお早めにお声掛けいただけたらうれしいです。ここで言ってもそれこそ無駄かとは思いますが、あえてここに、こう記しておきます。(というか、ここ以外のどこに書いとけば良いか分からないので……)

 あと、またしても僭越なことを書けば、まったくweb向きでも流行りでもないけど、こういう作品がカクヨムという場から出て行く、それも面白いじゃないかな、と思うのです。
 以前、あるweb出身の書籍化作家さん(一般文芸)の方が「どうしてもweb出身というと軽く見られがち」と嘆いておられたのですが、それがわたしにはなぜかわからないのです。どんな作品がどこから生まれてもいいじゃない、と。
 むしろ、いろんな感想を書き手と読み手の間でやり取りしながら作品をブラッシュアップさせていけるweb小説という世界をわたしは愛しく、また、誇りに思います。

 だから万が一、今作が世に出ることがあったら「わたしはweb小説界で育ちました」と胸を張って言いたいんです。

2件のコメント

  • はい、ではまず私めが「つるよしの様と言えば『梨子割』です」を肝に銘じましたよ!

    ぜひ、カクヨムから重厚な作品で広く世に出て行って欲しい。良い作品、いっぱいですもんねー。軽い読み口のものを否定する訳ではなく、単純に良い物は良い、好きな物は好き、でいいはず。

    公募、応援しておりますにゃ~!
  • @hikagenekoさま

    コメントありがとうございます!今回も読了ありがとうございました!

    あ、でも以前読んで頂いた『ディ・ア・レ・スト』でも『てんえが』でもいいんですよ!@hikagenekoさまのなかにいちばん!ってのがあれば梨子割でなくとも!
    @hikagenekoさまには、いろんなつるを見て頂けてること、ほんとうに嬉しく思っています。

    カクヨムにはいろんないい作品がありますものね。わたしもいろんなものを読みますし。星の数ほどの書き手から出逢って下さったことに本当に感謝なのです。
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