何か一つでも、自分の証拠を残してやらなければならないと思いました。そんなことは、結婚を済ませてから言うべきことでしょうか。僕にそんな大それた自己実現などできないだろうと思います。そんな考えの為に、他者をその人生と共に随伴させることへの罪悪感に耐えられないものと思うのです。
そんな自分でもと、そのような言い方を金輪際吐かない為にも、とにかくもう一度、もう一文、書いていかなくてはならないと、そういった意志を残しておいたとしても、寝てしまえば全ては忘却の彼方でしょう。暑さを失念する景色の中で、やはり埋もれていくだけなのではないか……とも思います。
しかし何か一つでも、自分の証拠を残してやらなければならないと思いました。何度も思いました。死ねば未練となるように感じました。生きていれば引力を伴っているように、その思考に陥っていました。それが自分という存在なら、それを慰められるのは自分しかいないのだろうと、そう思い至ったのです。その自己愛が羞恥となって働くことに、どうしようもなく耐えられなくなったのです。
そうして僕は半端者です。若輩者です。酔生夢死の境地です。止めるに止められず、始めるに始められず、続けるに続けられない愚かさです。だからまた書くようです。指は動くようです。筆は走るようです。僕はそれを頭上から眺める保護者のようにして怒りを露わにするようです。
はて、僕はどうしてこんなことをしているのでしょうか。