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存在を保証するのは目線だけれど

 そういう訳で、僕はまだ存在しています。誰もそんな事を気に留める事もないかもしれませんが、しかしそんな事を考えていても仕方ないでしょう。僕は消えかかってもいなければ、強く輝いてもいません。どこにでもいるような、何でもない人間です。だからこうして、存在しているなどと発言しなければならなくなっているのです。
 僕は猫ではないので、目線の有無を問わず、確かに存在しています。誰も気に留めなければ、それはいないのと変わらないものかもしれませんが、しかしそれだけの価値を生み出す努力は、十分ではなかったと分かっています。
 ここには誰も訪れてはいないのでしょうか。ここは、そもそも僕一人分でさえも存在できない程に狭い場所なのでしょうか。そうでなければ、宇宙の様にどこまでも広がっていく場所なのでしょう。ここには僕一人です。一人というのは、他者の存在によってはじめて成立する観念なのでしょう。だから一人ではないのかもしれません。ここには、もう誰もいないのでしょうか。
 僕は、他に誰かがいると思っていました。何者かが、僕の存在を少しでも確かなものにしてくれるのだろうと思っていました。僕は、そういう行動を怠ってきました。きっと、僕は周りにしてきた事のお返しを、今まさに受け取っているのだと思います。僕は、それでもここにいます。まだここにいます。消えずに残っています。



 残っています。

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