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枷をかける

 どうしようもなく時が過ぎていくのではなく、ただ留まっている自分がいるだけだ。その時には、どうしようもないのは、自分の方ではあるまいか。しかしどうして自分を責められようか。誰を責められようか。その時必死になっているのは自分だけではないのだから。
 余暇はある。疲労もある。僕は要領が悪いので、横になるも休めず、絶えず悩まされるばかりだ。焦燥が募る。泥に入り込み、もがいているうちにより深く沈んでいくようである。
 作家というものを、気の迷いで志した事はあった。時の流れに沿って確かに進んで行けば、やがて辿り着くのだろうと思っていた。しかしそれが自分の生き方となるのなら、既にそうなっている筈である。そうはならず、愚鈍であった。
 こうして、泥にまみれている。しかし沈みきってはいない。だからこそ、こうして連ねているのだ。こうして、自ら枷に手足を通しているのだ。それが今の僕だ。こんなのは、この世で一人に限るべきだ。そうはならないと分かっている。それがまた、悩ましい。

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