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恋愛小説「人魚へのキス」第5~7話更新(+異性愛規範について)

第5話「アウティング」
第6話「公然の秘密 其の1」
第7話「公然の秘密 其の2」

以上、更新しました。
水曜日の近況ノートの更新を忘れていたのは内緒です。

それはともかく、第5~7話はアウティングの話を深掘りしています。
改めて、アウティングの定義をおさらいすると、『本人の性のあり方を同意なく第三者に暴露すること』となります。

アウティングが問題となる背景には、性的マイノリティを取り巻く差別や偏見が社会に内在していることが挙げられます。

日本を含む東アジアは儒教文化圏とされていますが、儒教では『列女伝』に見られるように女性は無知で男性に盲目的に従属すれば良いという思想があります。
こうした思想は、家父長制と相性が良く、日清戦争後の日本では国策として、良妻賢母主義が取り入れられました。
(良妻賢母:夫に対してはよい妻であり、子供に対しては養育に励む賢い母であること。 また、そのような人)

明治政府は、国家統合のためには女子教育が必須と考え、儒教を意図的に読み替えて、『家庭の安定』と『未来の国民を教育する母性観』の構築のために、女子教育を推し進めた形になります。
これは、女性が家を側面から支える者と捉えられますが、あくまでも主体は男性であり、政府は性に基づく役割分業を国策として実施したのです。

こうした規範は、言うまでもなく異性愛規範が前提となっているものです。
そして問題は、日本において、男性が稼得役割を担い、女性は家庭を守るという考えが、未だに根強く残っていることです。
それは、男女の雇用労働率と賃金格差として、統計データに歴然と現れ出ています(参考資料参照)。

異性愛が当たり前という意識が社会に根付いている以上、その規範から外れる人は、拒絶されたり笑いの種にされたり、あるいは露骨に嫌がらせを受けたりもします。
私が子どもの頃にも、学校ではゲイは笑っていいものだという空気がありました。
(主に、某動画サイトの影響でしたが……)

アウティングは、こうした異性愛規範が浸透した社会構造に問題があり、決して個人の内面だけの問題ではないのです。
こうした問題を矮小化して、アウティングの問題を考えようとすると、責任は個々人の問題にしか還元されず、本質的なところは見過ごされてしまいます。

「人魚へのキス」は、こうした問題を少しでも読者のみなさまに知ってもらえるようなエンタメ作品を目指して執筆しております。
どうか、最後までお付き合い願えたらと思います。

そして、もしこのようなことで悩んでいる方が読んでくださっているのであれば、その人の希望となるような作品になれば幸いです。

○参考資料
・松岡宗嗣(2021)『あいつゲイだって アウティングはなぜ問題なのか?』柏書房
・瀬地山角(1996)『東アジアの家父長制 ジェンダー比較社会学』
・厚生労働省 令和2年版働く女性の実情「I 令和2年の働く女性の状況」2020年, https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyoukintou/josei-jitsujo/dl/20-01.pdf (2022年07月01日最終アクセス)
・内閣府男女共同参画局「令和2年版男女共同参画白書(概要)」2020年,
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r02/gaiyou/pdf/r02_gaiyou.pdf (2022年07月01日最終アクセス)

○家父長制と良妻賢母について
家父長制や良妻賢母主義、日本の男女格差など、詳しく知りたい方は、noteにまとめてありますので、こちらをどうぞ。
・『異化による差別の発見―日本の家父長制からセクシュアルハラスメントを再発見する―』https://note.com/t_nakaima/n/n6f5727eba352

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