• 恋愛
  • 歴史・時代・伝奇

恋愛小説「人魚へのキス」第4話更新(+日本の同性愛について)

第4話「誰を愛してもいい」更新しました。
毎週水曜更新のつもりでしたが、計算したところ、9月中完結させるには毎週2回は更新しないと間に合わないことが判明したため、急遽、水・土曜更新としました。

今回の話から、いよいよ同性愛に関する日本の社会構造に触れていきます。
(とはいっても、触り程度ですが……)
ですので、少しばかり、日本の同性愛とは歴史的にどのようなものだったのか、簡単に触れてみたいと思います。

日本における同性愛は、歴史的には比較的寛容とされていました。
とはいえ、当時の社会では記録や出版の権利を握っていたのは男性であり、女性同士の恋愛となるとほとんど記録は残っていないようです。
詳細は不明なものの、鎌倉時代の日本、江戸時代の大奥や遊廓では、女性間の恋愛は存在したそうです。

同性愛が記録として残されている最たるものは、男性同士の性愛である「男色」です。
ただし、これは成人男性と若衆(少年)との性愛であり、通過儀礼的な要素が含まれていました。
ですので、成人男性同士の性愛の形態は、個人的な欲望の形態としてはあっても、社会的な認知をへてシステム化されることはありませんでした。
(武士層の衆道なんかがシステム化された一例でしょうか)

17~18世紀には、キリスト教の影響でヨーロッパ諸国で同性愛者が弾圧されていく一方で、日本では若衆が男性を接客する陰間茶屋が賑わいを見せていました。
19世紀後半には、ヨーロッパで同性愛を病理化する考えが生まれ、宗教犯罪から精神病へと移行していきました。
こうした病理概念は、明治後期~大正初期にかけて日本に輸入され、結果、「変態性欲」概念が日本社会に流布されてしまいました。

このように、精神医学を根拠に非定型な性を持つ人は社会から排斥されていった歴史があるのです。
現代でこそ、同性愛は精神病として扱われていませんが、同性愛嫌悪を持つ人々は少なからずいるのが現状です。

「人魚へのキス」は、そのような現状を小説という形で明らかにしつつ、エンタメ作品として読ませる作品にできたらと思っています。
よろしければ、完結までお付き合い願えたらと思います。

○参考文献
三橋順子(二〇二二) 『歴史の中の多様な「性」』 岩波書店

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する