113話「それから:メルリィ・キータイトと、ある《呼び名》に関するささやかな取り決めの話」より、以下のシーン。
ユイリィの反応がなんか微妙な理由についてです(※挨拶
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「お部屋、使い心地どう? 足りないものはない?」
「いえ、問題ありません」
メルリィはかぶりを振る。事実そのままの報告である。
「そも、この部屋はつい先日まであなたが使っていた部屋ではないのですか? あなたに不要であり、かつ拙に必要な品は、拙の知識にある範疇では思い当たりませんが」
「あー……うん、そうだね。そうだよねぇ……」
「?」
メルリィは首をかしげる。
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もしかしたらわざわざこんな形で触れなくてもお気づきのことかもしれませんが。
ユイリィの反応が微妙な理由は、
毎晩ランディの部屋で一緒に寝てるせいで、客間はほとんど使っていなくて何があって何がないだなんてことはろくに関知していなかった
――でした。
お隣のアトリさんから貰った服が入った長持が客間に置いてあるので――あと、ランディの部屋には姿見になる鏡がないので――、朝起きて着替える時と洗濯した服をとりこんで長持に戻すときだけ客間に出入りしていました。
あと、メルリィが使っていた鏡台と藤編みの丸椅子ですが、これらはフリスが泊まりに来たとき用にとシオンが買い揃えていたものです。実質、シオンがいた頃はいちばんよく客間を使うのがフリスだったので、アメニティの類もほぼ彼女用にチューンされています。
ランディが小さかった頃はまだシオンもちいさい子の世話に不慣れだったこともあってフリスの手を借りることも多く、当時のフリスは割とよくウィナザード家でお泊りしていたし、最近もそこそこお泊りしていました。
そんなわけで、余談ながらウィナザード家、客間のほかに台所と浴室・脱衣所にはフリスが使う用の品がちょいちょいあります。シオンとおそろいのエプロンとか、肌を磨く用の乳液とか、髪のお手入れに使う香油とか。
これらはフリスがお泊り用に持ち込んだ品という訳ではなく、基本的にすべてシオンがフリス用にと揃えたものです。
唯一、おそろいのエプロンだけは、フリスが希望して買ってもらったものですが。
いずれにせよ、何やってんでしょうねという気はしますけれども。シオン。
また髪を梳かすのに使っていた「借り物の櫛」
こちらも元々この鏡台の抽斗にいくつかしまっていたものを、シオンが在処を教えたのがきっかけでユイリィが使うようになり、それをメルリィへ貸した――という経緯のものである、ということにしています。
これもフリスが使うだろうからと――櫛の歯が折れた時の予備もコミで――シオンが買っていたものです。ユイリィに櫛の在処を教えたのは、たぶんみんなでお泊り会してたときだと思います。
以上。今日はこれにて。