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北の森の住民5

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093085830709837


 カオ様の後継者について想起してしまい、再びナーバスとなる。

 いっそこのまま全てを捨てて何処かへ逃げてしまいたかったがそれでは余計に死ぬ確立が高くなる。俺は一人で狩りもできないし外敵から身を守る事もできない。自身の命を村とそこに住まう人間達に委ねなければならない、か弱い一生命なのだ。



 しかし考えてもみれば人間などどの世界、どの時代だってそうなのかもしれない。現代日本だって法と技術によって整備されてはいるがその制御や管理は誰がしているのか。自分が飯を食い服を着て夜でも安全に出歩く事ができ、家で暑さ寒さを防いで快適な環境で過ごし糞尿を垂れ流せるのは誰のおかげなのか。俺が会社のストレスを発散している間、他の人間のために働いている者が確実にいる。名前も知らない誰かのために働く。そうした社会的活動により、人類は発展してきた。共存共栄こそが人間の持つ最も強力な能力ではないかと思える程に、相互扶助の効果は高い。

 

 だが、俺はこうも考えた。





 だったら、俺はこれまで、誰に対して何をしてきた。

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