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原始生活3

https://kakuyomu.jp/works/16817330656927273343/episodes/16818093077157236374

「なんだか落ち着くね」




 草のラグに座るエーラは気の抜けた顔をして一息落とし油断していた。隙を見せるという事は安住している証拠だ。所感は上々。このまま食べて寝てを繰り返していただければ屋外での生活には耐えられなくなるだろう。そうなれば万事上手くいく見込みが立つ。プレハブ以下の建物だが、それが彼女の生活水準を飛躍させた。その事実が群れに伝わり家に住むという概念が定着すれば晴れてプライベートが確立される。エーラには、是非とも最低限文化的な生活に染まってくれなくては困るのだった。





「なんか、喉乾いちゃったな」



「あ、木の実おいてあるから食べて食べて」




 エーラの機嫌を損ねるわけにはいかない。彼女のレビューが今後の発展に繋がるのだ。左団扇、別天地の居心地でいてもらい、ポジティブコメントを伝播していただく予定。格別のもてなしを提供する所存で、貯蔵していた木の実を渡す。





「ちょっと渋いね」



「渋い方が好みなんだよ」





 この辺りで採れる木の実は酸味か苦味が強いものが多く、だいたいの人間が酸味の強い方を好んでいた。





「私、酸っぱいのがいいなぁ」



「……」



「酸っぱい木の実、ない?」



「……採ってくるよ」

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