この章から怜の出番が減ります。というかアウターに今後大きな動きが起きるので必然とディークの視点が増える事になるからです。
とはいうものの物語の構成や重要人物達の人間関係で彼女が中核を担っていることには変わりはありませんのでご安心くださいませ…
さて、前の章から引き続き破壊と死を撒き散らしたコロニー出身の人物・ダストですが彼の描写によるとコロニーの『外周』出身者は非常に過酷な生活を送っています。
『内周』の出身者は過酷な労働を強いられ、食料も配給制で水や食料も人間が必要とされる最低限を配給されますが過酷な環境の中でそれだけ腹を満たすことが出来ず内部の治安は良くないです。場所にもよりますが警察に当たる治安部隊も喧嘩や軽い盗難程度では動かない為、自分の身は自分で守らねばなりません。
これは基本的に多くのコロニーで見られる状態ですが一部例外もあります。
ダストは外周出身の貧困層でしたがとある人物にGFパイロットとしての素質を見出され、外周の警備部隊長まで上り詰めています。実は彼のようなケースはそれほど珍しくもなく10歳までの間に課せられる能力調査で見出されたごく一部の者は取り立てられることがあります。
そのほかの要因でスカウトを受けたり、容姿が優れた若い住民は権力者の愛人として招かれることがあるのです。
コロニー移住権という単語は3章辺りで出てきましたが、これは実質的にアウターの協力者を募る為の撒き餌であり、実際に移住出来た人間も拘束された挙句過酷な強制労働を課せられ長く生きられませんでした。コロニー視点でもかなり優秀な人間ならば『内周』で暮らすことも出来ましたがこちらも厳しい監視下に置かれて生活もかなり制限された中で要求をこなさなければならず、応えることが出来なければ外周に放り込まれるか、機密保持の為に処刑されてしまいます。外周よりはマシかも知れませんがアウターで暮らした方がいい暮らしは出来るかも知れませんね。
結局のところコロニーが建造された頃から特権階級に位置した人間がそのまま支配階層にスライドし、中世の貴族社会の様に少数が圧政や監視で多数を支配する社会になっています。
ある意味現実世界の北朝鮮に似たディストピアに近いですね。
物語の世界観は執筆を始めた当時の筆者の視点により現実世界の未来に世界を荒廃させるほどの大戦が起きた後に怪獣のような巨大生物が現れるようになったら…といった風な空想を巡らせて構成しています。つまり現実と同じようにかつては多くの人類が多数の民主主義国家の元に自由と平等が保証された世界で過ごしていたわけですが、社会構造に変化をもたらす出来事が立て続けに発生したことでインフラが維持できなくなり作中の様な過酷な世界になったのです。
作中でも少し触れましたがダストが持っていたチョコレートの味をしたレーションはそれなりの地位についたものでなければ支給されない贅沢品です。
そんな彼ですらもアウターの民家に会った干し肉はうまいと感じる程コロニー内部の食糧事情というのは恵まれてないようです。
さて、この章が終わった事で物語は折り返しに近付いてきました。最後まで書き切れるかどうかはわかりませんがお付き合いいただけると幸いです。