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1日5000文字書いていた時の話。

 某小説大賞に応募するため、作品を書いていた時の話。
 その時は、1日5000文字書くことをノルマにしていた。その目標設定は向上心に由来していたわけじゃなく、単に締め切りに間に合わせるには、1日5000文字書かないといけなかったからだ。
 締め切りまで残り20日。応募規定は字数10万字以上。100000÷20=5000。そういうことである。
 小説を書いた経験がある人は、「1日5000文字書け」となったら、どう思うのだろうか。僕は、それはもうとてつもなく大変だった。

 一番最初に完成させた小説は、4000字の短篇。1週間くらいかかっただろうか。そんなに苦労した感じはなかった。
 次に、計20000字の連作短篇。締切りまで5日を切り、ようやく書きはじめる。1日につき4000字。二次創作ものならではの難しさがあったし、1日のノルマもきつかった。しかし、執筆期間は短い。
 その次は、これも応募用の作品。与えられたお題に沿って書くもので、総字数75000以上。作品の構想を練るのに時間がかかり、締め切りまで20日を切ったところで執筆スタート。ノルマは1日約3800字。初めての長編作品。もちろん苦労したが、物語を完結させなくてもよいことになっていたので、着地点に関してはそこまで気負わずに書けた。世界観やテーマ、登場人物の設定をある程度決めていたのも大きかった。

 そして、件の10万字作品。もう、完全に未知の領域である。75000字の作品を書き終えた僕は調子に乗って、締め切りまで1か月を切っていた小説大賞に応募しようと決めたのだ。しかも、その小説大賞を主宰する文庫は女性向け。完全に血迷っている。
 それでも、テーマを恋愛に定め、前の小説大賞の時にボツにした設定を持ち込み、執筆は始まった。まさしく地獄の始まりである。

 この時に痛感したのは、プロットの重要性だ。1日5000字を書くのもそりゃ大変なのだが、それよりも物語の展開を考える方がもっと大変なのだ。
 作品世界の練り込みが足りないから、先の展開が全っっく思いつかない。本当に、何も出てこない。こうなると悲惨だ。文章自体にも影響が及ぶ。劇の台本みたいな、柔軟さが皆無のガチガチ文体になってしまう。登場人物の台詞と、乏しい語彙の動詞しかない、全然読み応えのない小説の爆誕である。
 内容は悲惨だったが、それでも完成はさせようと思った。朝起きたら、すぐプロットを考える。プロットがあれば、何とか書ける。IPhoneのメモに、ずらっと箇条書きしていく。詳細な台詞まで書き込むこともあった。ご飯を食べたら、PCに向かう。作品の中盤を書いていた頃は、もう全く筆が進まなかった。一体何を書いたらいいのかわからなかった。2000字にすら届かない日もざらにあった。先にプロットを書くようになって、そこはだいぶ改善されたけど。
 それでもなんとか、ボロボロになりながらも作品は完結した。10万字、書ききった。とても読めるような出来ではなくなっていたが、長編を初めて書ききったことは、大きな経験になった。わかりやすすぎるくらいの反動が生じて、今は全く小説を書こうと思えなくなってしまったけども。
 しかし、この夏は児童向けの作品を募集する小説大賞がいくつかある。これは応募しなければいけないだろう。幸い、応募規定の作品総字数も多くない。日があるうちに、世界観構想練って、プロット書かないと。

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