少し間が空いてしまいましたが、詳細版の解説行きます。
詳細というより文法事項メモになりますが……。初歩の文法は知っている方向けを想定して、細かい説明は省きますのでご了承ください。
注:
・名詞は主格、形容詞は男性形、動詞は一人称単数形を『原形』扱いで記述します。
・名詞の性はf(女性)、m(男性)、n(中性)で略記します。第一変化(全て女性)と第二変化(全て男性)は省略します。
・動詞は特に言及が無ければ直説法・能動相・現在です。
・文法用語などは私の手元の教科書に依拠しています。
<前半>in terra
in:前置詞。奪格支配で「~の上に、~の中で」。対格も支配でき、その場合は「~の中(上)へ」といった動的な意味になる。
terra:第一変化名詞terra(大地)の単数奪格。
○各話タイトル
lumen:第三変化子音幹名詞lumen(光)の単数主格(n)。
stellae:第一変化名詞stella(星)の複数主格。なお単数属格も同形。
altum:形容詞altus(高い、深い)の中性形。
mutatur:第一変化動詞muto(変える)の受動相三人称単数形。
tenebrae:第一変化名詞tenebrae(暗闇)の複数主格。複数形しかない模様。
全体を文章として見ると補語になる(と思う)が、補語は主格でいいらしい。
nuntiabitur:第一変化動詞nuntio(告げる、知らせる)の受動相未来の三人称単数形。
sors:第三変化子音幹名詞sors(運命、託宣)の単数主格(f)。
novissima:形容詞novissimus(最後の)の女性形。
形態としてはnovus(新しい)の最上級に見えるが、「最新の」ではなく「最後の」らしい(手元の教科書によると、novusの変化は不規則扱いで比較級recentior、最上級recentissimus)。なお、「最後の」を意味する単語はpostremus、ultimus、supremus など教科書から探せただけでも沢山あったのですが、語義が『時系列的に後ろであること』を重視してpostremusとnovissimusに絞り、さらにネット上の羅英辞典?を見てpostremusは大変ありふれた日常語であるらしいこと、「最低の、最悪の」という意味も持つらしいことから、ほどほどに用例が少なく文学的に映えそうな(本の題名?で使われているのを発見した)novissimusを最終的に選びました。
※と、こんな感じで実は、各話タイトルの性数格は全体を文章としてみた時の形を基準に決めています。
<後半>super mare
super:前置詞。対格支配で「~を越えて、~の上へ」。奪格も支配でき、その場合は「~について」となる。
mare:第三変化i幹名詞mare(海)の単数対格(n)。
ちなみに、transじゃないのか? と思われた方もいるかもしれませんが、海を越えていく途中の(海の上にいる)ニュアンスを重視したくてsuperを選びました。あとinとの対置でsuperのほうが意味も用法も近かったので。偶然ですがterraもmareも主格と同形の単語で、なんか綺麗に揃ったな、と思いました(笑)
○各話タイトル
eo:不規則動詞のeo(行く)の一人称単数形。
secundum:前置詞。対格支配。「~に従って、~のあとに」の意味。
memorias:第一変化名詞memoria(記憶)の複数対格。
タイトルとしては「思い出」か「思い出に」にしたくて(「思い出を」じゃ単体のタイトルとして変な気がするので……)、主格と同形か与格になる単語・用法を色々探したのですが、格変化の壁はどうしても越えられず(笑)、最終的に『secundumと合わせたら「思い出に~」なんだからいいや!』と対格のまま「思い出に」としました。……後半いろいろと訳が強引なのにそこだけこだわってどうするんだという気もしますがね! なお、複数形にしたのは単数対格memoriamだと妙にmが多いから、という特に意味のないフィーリングです。
die:第五変化名詞dies(日)の単数奪格(m)。『時間の奪格』というやつのはず。
cum fortuna:
cum:前置詞。奪格支配。「~と共に」。
fortuna:第一変化名詞fortuna(幸運)の単数奪格。
「幸いあれ」とするならsum(英語でいうbe動詞的なやつ)の接続法(意志、願望などを表す)の二人称単数形sisを補って、cum fortuna sisかなとか思っています。ちなみに教科書にはBeatus sis.(君が幸福であるように)という例文が載っていて、意味合いとしては近いですね。
エピローグについては元々外伝のつもりでいたのでラテン語タイトルを考えておらず、突発的にネットで拾ってきた感じなので、あまり深くは調べていません。簡易版に書いたことで全てです。
あえて補足するならvaleは第二変化動詞valeo(健在である)の命令法の二人称単数形らしいです、ぐらいかな。教科書には別れの挨拶には「valeoの接続法を使う」と書いてあるのですが、この辺はいろんな表現があるとか、時代とかで変化もあるかもしれないですね。(いま色々見ていたら命令法で「さようなら」の例文もあった)
以上、偉そうに書きましたが、私もラテン語は大学でかじったくらいなので正しいかどうかは分かりません!^^;
誤り、不正確等、お気づきの際はご指摘をいただけると有り難いです。
ちなみに私が『教科書』と言っているのは↓
松平千秋・国原吉之助共著『新ラテン文法』東洋出版,1992
実際に大学の授業で使っていた本です。信頼性は高いみたいですが、授業を意識した作りになっているので独学で調べるにはちょっと使いにくいかも?