紫 李鳥

大工見習いの佐吉は腕がいいのに、鉋だけは下手くそだった。その訳は……

弘毅とは社内恋愛だった。同期入社で、同い年のせいか、恋人というより友達感覚だった。そんな時、不意に結婚の話が出た。

人影のない改札口であなたは革の手袋を外した。そして……

“悠々自適”を余生の目標に掲げ、片田舎に引っ越して来た一人の男。絵を趣味にしながら自給自足で暮らしていたその男の人生を狂わせたのは、山道に不釣り合いなハイヒールを履いた一人の女だ…

アイスコーヒーを飲みながら読書をしていると、少し開けた窓から入るそよ風がレースのカーテンを揺らしていた。

女の子を助けようと奮闘したり、恋をしたりと、大活躍する野良猫ニャン吉の物語。 ※連載にしました。

きみとぼくでつなぐ、わけのわからぬ世界。

見覚えのある筆跡から始まる再会。――その客は、過去からやって来た。

ちらつく雪が、終わったはずの恋を連れてきた。

テレビや週刊誌は、矢口雅子に〈鬼母〉のレッテルを貼って、面白おかしく取り上げていた。

こんな日は、……あなたに逢いたい。

生まれてすぐに母親を亡くした千代は、継母の松枝ではなく乳母の佐江に育てられた。十八年後、千代は芸妓になると松枝の男に近づいた。

適当な場所を見つけると、果実酒をラッパ飲みした。――あとは雪が降るのを待つだけだ。

コピーライターになったつもりで、キャッチフレーズを。

年末になるとめんどくせぇのが、大掃除だ。そこで、一人もんの伊吉は、彼女のおよねに頼むことにした。ところが……

会社を辞めたかったが、他に何ができるのか分からずにいた。そんな時、久し振りに会った友人が溌剌としているのを見て、現状の自分がちっぽけに思えた。

東京のデパートでマネキンをしていた柊子は、訳があって退職すると、姉が嫁いだ金沢に移り住んだ。

あれから十年の月日が流れました。小雪は美しい娘になっていました。

日本海の荒波は波の花を舞いながら、灰色の空の下で哭いていた。汽車の窓から覗く疎らな家並みに心細くなりながらも、澄はその荒涼の地に降り立った。

友人から誘われたパーティー。そこで二人の男性に出会った。

急行・池袋行き。車内はいわゆるすし詰め状態だった。もうすぐ池袋駅に着くという寸前、若い女の悲鳴が静寂を切り裂いた。 ※これは、交通系ICカードが普及する以前の物語です。

求人誌を捲っていると、条件に適った一件の募集が目に留まった。

父さん、兄さん、ふるさとの会津、そして、悪夢よ、さようなら。与志子は車窓に流れる山並みを眺めながら、心の中でそう呟いた。

拾った携帯を手にしながら、大典は利用方法を考えた。 ※これは、GPSが搭載される以前の物語です。

窓から覗くイチョウの葉と空を眺めながら、“追想”に時間を費やすのだった。

その事実は、父が交通事故に遭ったことで発覚した。

呑めない僕は、コーヒーでお月見。

台風13号は九州北部を直撃し、土砂崩れを起こした現場から遺体が発見された。

その小さな村には、一本のトンネルしかない。

出逢いも運命。別れも運命。

記憶の中で息づく情景。

夫殺しを疑った寿子には、完璧なアリバイがあった。 ※これは、ホームドアが設置される以前の物語である。

結香との出会いは、背負ったリュックサックがきっかけだった。

カブトムシにクワガタ。虫取り網を持った少年の夏は終わらない。

新しいパパがプレゼントしてくれたのは、ドールハウスでした。

阿以子の趣味は映画鑑賞。特にサイレントが好きだった。

花魁道中見たさに、黒山の人だかりだ。

むっとする熱気が、理性を麻痺させた。

母はスーパーに行く途中で、その交通事故を見てしまったのだろうか……

忌まわしい現実から逃れるために、美希子は木下と見合いをした。

子供の頃から縁側で西瓜を食べるのが好きだった。

独身の芳雄は、風呂付きのアパートに住みながらも広々とした銭湯が好きだった。 ※湯女（ゆな）とは、江戸時代初期の都市において、 銭湯で垢すりや髪すきのサービスを提供した女性。

器量が悪い田舎者の由紀恵は、友達もできず、黙々と仕事をする毎日だった。そんな時、甘い誘惑が由紀恵の寂しい心を刺激した。 『醜女の林檎』(しこめのりんご)

両親の墓参りにやって来たポン太。だが、ポン太には親に言えない秘密があった。 きつねのなにかさん主催の「お盆限定！　３つのタグをいずれか～全て使って短編を書こう！　「お盆」「夏の…

聞き込みをしている時だった。毛筆で、〈句会 撫子〉と書かれた木の看板が山根の目に留まった。

星のまたたきは、母さんの笑顔。 ※@chauchauさん主催の【第2回】三つのキーワードで小説を書いてみませんか【「金貨」、「カタツムリ」、「星」】に挑戦してみました。

書けなくなった亮夫は、自分の限界を悟った。

母親は 俺を 棄てた。

一粒の涙が頬を濡らしてた。

夜の雨音を聴きながら、想う……