ここのところ、手を加えつつ公開している「私と彼女」の背景について、少し。
小物やセリフなどにいろいろレトロ感があるかと思いますが、時代は2000年代初め、舞台は東京~埼玉の多摩地区、西武池袋線の近辺を想定しています。
まだ、かろうじて地域のコミュニティが維持されているような、その当時でも少し古めな雰囲気の街。
「菜香町屋」がある商店街は、そんな場所にあります。
性描写ありの恋愛百合小説でもあると同時に、地域社会の中で、こんな二人がどうやって暮らしていくのか、という生活小説でもあります。
当時、地方都市に住んでいたわたしは、次第にバラバラになっていく社会を、二人の子を育てる主夫として見つめながら、少しノスタルジックな日常ファンタジーとして、憧れも込めて書いていました。
そんなわけで、第1部では恋愛描写主体だった物語は、2部、3部と続くにつれ、日々の生活や社会描写の割合を増していくことになります。
今読み返しても、無茶なことをしてるなぁ、と思うことしきり。
でも、みのりや佳澄の気持ちを追っていると、その頃の自分の想いにも会える気がして、「書いておいてよかったな」と思えるのです。