初めての経験というのはえてして失敗が伴うもの。緊張するし、予定通りには進まない。デカいモノに苦しくなったりするものです。
もちろん、処女作の話。デカいモノ? プレッシャーに決まっているでしょ。
今回の作品紹介は『Re:天使のいない街』。
私の処女作『天使のいない街』のリメイク版について語ってみようと思います。
元々私が小説を書き始めたきっかけは大学に入ったばかりのころ、高校時代の友人と同人ゲームサークルを作ろうという話から始まりました。高校時代、本の虫だった私にシナリオ担当が回ってきたというわけです。
そのサークルも最初の熱量だけですぐに萎んでしまい、なんとかコミケのサークルチケットが欲しいから書いていたシナリオを小説にして参加しよう、ということで書き上げたのが『天使のいない街』でした。
今読むとそれはひどい出来で、この作品を人質に、
「おとなしくしろ、バラまくぞこの野郎!」
と脅されたら、私はそいつと刺し違えてでも仕留めるでしょう。
まぁ、プロアマ問わずモノ書きの処女作なんてほとんど黒歴史でしょうが。
そんな経緯があるので、この作品を書くにあたって考えたことは結構あります。
まずは場面転換を少なくしました。ゲームを作るのに背景が増えると大変ですからね。風景も黒い空間に渦のようなものが見える、という描くのが簡単そうな設定にしました。
ヒロインをきちんと掘り下げるというのも、最初に学べたのは大きかったです。ギャルゲーにするならヒロイン分のシナリオが必要なので、キャラが自然と立ちます。選択肢によってすべてのキャラがメインヒロインになるわけですから、書かないわけにはいきません。私の作品はサブヒロインが案外人気なのですが、この辺りから来ているのかもしれません(遥華姉、秋乃さん、氷雨ちゃんとか)。
そして、登場人物を絞ること。これも作画を減らすためですね。これは小説を書き続けるのにはマイナスで、自分の作品はモブ率が低いんですよね。ちょい役もメインにやらせようとする。ちょっと目立つモブを入れるとキャラ絵を考えなきゃ、と思ってしまうのです。
そんな作品を再度書こうと思ったのは、某サイトにて投稿の依頼をいただいたため。中長編のネタがなかったこともあり、許可を得てリメイク版を載せさせていただきました。
その際には、血の涙を流しながらおもしろくなくなってしまった自分の作品と向き合わねばなりませんでした。
今でいう異世界転生ものなんですが、裁判がベースにあって移動もないため、会話のみで進めるという割と無理な展開は、今読むと気になるところではあります。しかし、一人の青年が死を皮切りに自分についてしっかりと考えていく、というのは青臭かった自分なりに出した伝えたいテーマだったのではないかと思います。
天使のいない街は全4巻あり、リメイクは1巻のみとなっています。いまさら他もリメイク、とは考えていないのですが、今でも私の好きなキャラクターが多い作品となってます。そのうちゲストで出てきてほしいですね。
そんな作品なのですが、実はリメイクしたときも最後の一文だけはそのまま使いました。
物語を越えて、霧を晴らす春風のような一文は私の作品の中でもお気に入りの文章の一つだったりします。