今年もよろしく🎍
読んだ本について書きます。(短編集で、まだ全部は読んでない)
種村季弘・編『日本怪談集 奇妙な場所』河出文庫
この中に入っている
小沢信男「わたしの赤マント」
昭和57年、『週刊アダルト自身』の読者投稿欄「お尋ねします」に寄せられた、日中戦争の頃(つまり読者が子供だった頃)「赤マント」という怪人のうわさが広まり、それがちょうど先年小学生の間で流行った「口裂け女」の噂が広がったのに似ていて、それであれは何だったのか知りたい、と。すると、当時のことを覚えている人から次々と「赤マント」情報が寄せられる。この投稿欄はしばし「赤マント」で盛り上がる。
『週刊アダルト自身』の投稿欄「お尋ねします」に掲載された読者からの寄稿が紹介された後。
編集長の知り合いからの小学校のときの同級生からかかってきた電話で ”ぼくらが知ってた赤マントとあずき婆” について、長々と話され当時の記憶が呼び覚まされる。
そして、さらに、「赤マント」が気になって図書館へ当時の新聞を調べに行った読者から、記憶していた記事が見当たらない、探し方が下手なのか、当時読んだ新聞が何であったか思い違いをしているのか、でも、わたしが鮮明に記憶している「赤マント」の一件についての記事について伝えます、という長文の投稿。
それに対して、「お尋ねします」欄の規定の字数を大幅に超えているので掲載はできません、ご了承くださいという、送り返された原稿に添えられた編集部からのお手紙が続く。
これは、モキュメンタリーですよね。そして、その中で、『週刊アダルト自身』に掲載されて読者が目にしたものと、掲載されることはないまま読者には隠された「赤マント」についての話があることが描かれているんです。
さすがというか、見事ですね。やはり過去の名作は読まないといけませんね。(なんか淀川長治口調になってきてるね…)
そう、あらためて思った、お正月でした。
この短編集には、小泉八雲「狢」も入っていて、私は絵本かなにかで読んだだけだったなあ、原典はこれか! というのがあり、そして、NHKラジオ第二の「エンジョイ・シンプル・イングリッシュ」で放送された英語ドラマ版「ムジナ」は、脚色によってもっとこわい仕上がりになっていたなあと思い出しました。
種村季弘・編『日本怪談集 取り憑く霊』河出書房
というのもあります。
追記:
読み直して、上に書いたのにまちがいがあるのに気がつきました。
編集長の知り合いではなく、最初に「赤マント」についてお尋ねした方に、その方の小学校の同級生だった人が電話してくるんですね。
その後、最初に「赤マント」についてお尋ねした人が、長文の原稿を編集部に送って、それは載せられませんと編集部からことわりの手紙がその方に届く、という構成でした。