カラッカラに乾燥した状態の切り干し大根をテキトーな量だけ小鉢に入れまして七味を振ったら直の味ポン酢からのちょいちょい天地返ししながら5分くらい待って食すというスーパー未開人スタイルで夜食を頂きながら本を読んでいました。あ、完全に戻りきってないくらいからイケるので自分がどこからイケるのか把握しておくと後々の切り干し大根ライフが捗りますよ。
というわけで、大石圭『殺意の水音』を読みました。
面白いところもあったのでネタバレ注意ー。
本作は角川ホラー文庫から2015年の出版となっております。
とやかく説明するよりあらすじです。ネタバレしないようにするのがめっちゃムズイですが、頑張ります。
ちょっとだけ不幸な生い立ちの主人公くんが漫画家を目指すも挫折したことから殺人鬼へと変貌、空港すぐそばのホテルでマスターキーを片手にスラッシュ! スラッシュ! スラッシュ! という感じです。
文体はいつもの――いつもの? ちょいちょい取り上げている気がしないでもないですが、簡潔でさっぱり目の描写文に対してネチっこめなモノローグウィズ短い個人史。ときおり擬音が多めになるのはホラーの特徴ですね。
というわけで、お気に入りポインツですが重大なネタバレを含みます。
ではお気に入りポインツ1!
あらすじを書きましたが、あれで本作の7、8割は説明してしまった格好になります。そこがお気に入り。そうです。主人公は三本の包丁を手にホテルに乗り込み、ひたすらスラッシュしていくだけです。その潔さがお気に入りといえばお気に入り。
お気に入りポインツ2!
主人公の感情移入のできなさ。これ気になるポインツとも被るところあるのですが、たしかに不幸っちゃ不幸な生い立ちなんですけど割とどこにでもあるくらいの不幸なのです。しかも幼少期からだいぶ変な奴。
スラッシャーに共感したり爽快感を覚えたり、あるいは意味が分からなくてゾワゾワしたり、そのいずれでもないスラッシャーは希少です。
お気に入りポインツ3!
特に何も起こらずに終わるところ。リアルっちゃリアルです。まあ殺人が発生してるので何も起こらずっていうとアレなんですが。
気になるポインツ1!
主人公への感情移入のできなさ。ふとしたことでブチ切れてスラッシャー化する普通っぽかった人といえば『フォーリング・ダウン』の主人公が最高ですが、こちらの主人公はちょいちょい理解できるんです。理解できるんですが、主人公と同じ部分が自分にも……みたいな感じにはちょっとならなかったです。主題になってる論理に対して殺して回る理由がぶっ飛んでるといいますか、その思想に至る説明があって欲しかったかも。まあ個人の好みですけれども。
気になるポインツ2!
被害者の心理描写とか生い立ちが邪魔ではないけどあっても特になんか起きるわけでもないみたいな。殺されるほうも嫌な奴なんですけど極悪ではなくどこにでもいる感じのちょっと嫌な部分を強調した感じなのに対して殺して回ってる方は途中の心理描写で何だこいつって感じになっているので、なんかそういうことが起きたくらいの認識で止まっちゃいました。そういう意味ではいっそ被害者が徹底した善人だったりしたからこそ主人公がブチ切れたりとかが欲しかったかもです。個人の好みですね。
気になるポインツ3!
なんか親ガチャ敗北からの貧富の差と個人の資質で恨みが募って爆発っていう現実にも稀に起きている事件の構造なんですが、まんますぎてホラーとして扱うのはどうなのかという感情になったりしました。作者さまの出身が純文学系ですし、もっと純文学に寄せたほうが味付け良かったかもしれません。好みの問題ですし超絶に余計なお世話ですね。うん。
まとめ……読む人によってだいぶ印象が異なると思われます。私には正直あまり合わなかったです。嫌うほどでもないですが、やってることがずっと同じですしどこかで見た不幸話に人物造形にって感じでさーっと流れていく感じ。一時間もあれば読めるので、グロが平気な方ならちらっと読んでもいいかもなー、みたいな感じです。
切り干し大根が腹の中で膨れてきたので、このへんで。
明日はちゃんとウカガイ様を書かないとー。