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書いて、読んだ。

なんだかペースがとってもスロウリーですが書けてるだけで僥倖ということにしておきたいものです。でもってでましたド田舎因習ホラーのお約束――本家と分家! とりあえずこの二単語を出しておけば急に因習感が出るというマジカルパワーワードです!
というわけで、バリー・ライガ[作] 満園真木[訳]『ラスト・ウィンター・マーダー』を読みました。
面白かったーのでネタバレ注意ー。

さて本作は、創元推理文庫から出ておりますシリアルキラーすなわち連続殺人犯を父に持つ少年の青春ミステリ三部作の最終巻であります! 
そうです! 買う前に裏表紙のあらすじを読めよ案件N回目です!
いやーー、さすがに状況把握に難儀しましたね。なにしろ冒頭から主人公が死にかけていますし知らない名前がずらずら出てきますので、筋を把握するのに五ページちょい必要でした。
ともあれ、あらすじ。三巻の。

舞台はアメリカの片田舎(とニューヨークはブルックリン)。アメリカ史上最悪の連続殺人鬼、130人くらいをめちゃくちゃにした男を父に持つ主人公少年くんは、どうやら前作前々作で街に現れたシリアルキラーと戦う過程で父の存在に気づいたようです。でもって父が脱獄、連続殺人鬼から手厚く指導を受けた息子という地獄のような記憶と向き合いながら、あるいは向き合うために父を追う過程で行方不明になった母の手がかりを掴んで追いかけてたら連続殺人鬼の父のファンで仲間な連続殺人鬼にたどり着いてFBI捜査官に足を撃たれたところからスタートです。
……い、意味がわからん! いや私は分かっていますが。

ちなみに主人公くんには血友病のうすらデカいバカな親友と黒人で女優を目指す彼女ちゃんがいますが、それぞれ別々の連続殺人鬼の手によって窮地のただなかです。
主人公くんは父のファンで父に嫉妬してる連続殺人鬼にぶち殺されかけてますし、親友は主人公くんのイカれた婆ちゃんのお守をしてる間に主人公くんのおばさんに色目を使われ流されかけるも頭をカチ割られかけてます。彼女ちゃんに至っては主人公くんの父に監禁されていままさに拷問と尋問が始まろうとしています。すげえなアメリカンミステリ。
物語はそこから怒涛の展開に……といきたいのですが、これが割とすごく青春ミステリなのです。主人公くんがいい具合に自らのアイデンティティと復讐心と過去のトラウマと彼女への愛と親友への思いと悩みまくって何か線が細い感じなんです。クラスの隅っこでポケットに両手を突っ込んで悲し気な目をしてる感じです。方向性はだいぶ違うけどジェームズ・ディーンなティーンエイジャー感。

文体は三人称の多視点で、主に主人公くん、親友、彼女、たまに刑事と殺人鬼とモブとって感じですか。翻訳なので苦にせず読めますが、この訳がいい具合にトチ狂っているといいますか、私がたまに書くトンチキ一人称みたいな、饒舌かつ軽口ばっか言ってる三人称なんです。大好物です。特にバカで下半身直結タイプの親友。詳しくは後述します。


ではネタバレ注意ー。重大なネタバレもあるのでマジ注意ー。


ではまず、お気に入りポインツ1!
先ほどの文体からの続きですが、主人公の親友がすっごい好きなタイプのキャラで、かつすごい好きなタイプの地の文です。たとえば女性とみたら即座に口説きにかかり、冗談を無視されると『急に耳が悪くなったらしい』で片づけたりするんです。ジ・アッムェェリカ。そのくせこいつ、主人公くんに猛烈なブロマンス的な友情を持っていまして軽口飛ばしまくったあげくに電話を切った直後、約束を果たせなかったことに涙を流したりするわけです。お前ちょっとカッコつけすぎだろう。

お気に入りポインツ2!
いくらなんでも無茶苦茶な設定がわりと好みです。
主人公くんのお父さんはシリアルキラーなんですが、そのお父さんもシリアルキラーで、シリアルキラーのお友達とシリアルキラーのファンがついていまして、全米に張り巡らされたシリアルキラー連盟みたいなところに所属していて、そいつらの王がまた別にいて、実はそいつは……ってもうアメリカ全土が金田一少年の事件簿の学校みたいな空間。嫌いではないです。無茶で。

お気に入りポインツ3!
最初は意味が分からない部分も我慢して読んでいれば、旧2作の内容も朧気に見えてきて、でえじょうぶだでぇてぇわかったってなるところ。けっきょくはシリアルキラー追っかけてるだけですしね。


ってことで気になるポインツ1!
主人公くんは幼少の頃から伝説的連続殺人鬼に連続殺人的教育を施されながら育っているので連続殺人鬼的な手練手管に長けているようなのですが、それにしちゃ短絡的な思考パターンなのは虐待の影響なのでしょうか。それとも親父さんが短絡型の殺人鬼だから? 

気になるポインツ2!
主人公のパパさんが130人以上を残虐な手段で殺害した21世紀最悪の連続殺人鬼らしいんですが、あんまり凄みを感じません。数人を殺して食べちゃったレクター博士のがよっぽどおっかねーです。この辺は描写の問題というか、主人公が身内だからかもしれません。

気になるポインツ3!
いきなり最終巻を手に取ってしまった私的にはこのオチでも全然まったく問題ないのですが、シリーズを追ってきた読者さん的にはどうなんでしょうか、このオチは。というか、主人公くん、君、あの、まあいいか。
続き物をあんまり読まないか読んでも途中からぶっこ抜いて単刊の如く読むという私のスタイルは、こういうとき意外と強かったりするのです。思い入れとかありませんからね。


まとめ……地の文のテンションが超好き! だけど癖が強いといえば癖が強いので人を選びますね。全編とおしてアメリカ軽口とモジモジ少年なので好きな人は好きで嫌いな人は大嫌いです。多分。
いちおう、本作だけでも普通に読めますが、主人公くんのサーガとして読むには一作目からが必須でしょう。でも一作目から読んで本作のオチにたどり着いたら壁に叩きつけるかもしれません。読んでないので分かりませんが、もしかしたら最初に伏線があるやも。

といった感じで、次は本屋で平積みしてたから仕方なく買ってしまった円城塔『コード・ブッダ』です。ざっくりいうと悟りを開いたと主張するチャット・ボット・ブッダの話。冒頭から20ページくらいずっとゲラゲラ笑ってました。
ウカガイ様も書かないとー。

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