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読んだ

モチベがでてこないのはインプットが足りないからかもしれません。ええ。もちろん分かっております。書くのがダルいけどダルいと言いたくないからそういうことにしているんだろうと。でも、読んでしまったものは仕方ないのです。
そう、ケイディ・クロス[作] 小林美幸[訳]『少女は時計仕掛けの首輪を填める(スチームパンク・クロニクル)』を。
面白かった……のでネタバレ注意ー。


さて本作はスチームパンク・クロニクルシリーズの第二作で……またシリーズものの二冊目かい! 何なんでしょう、このタイトルと表紙で手に取っているだけなのに二巻を掴んでしまう率の高さは。ここまでくると宇宙英雄ローダンシリーズの膨大な作品群から的確に二巻を掴みそうな気すらしてきますね。
まあ、そんな愚痴はさておき、ざっくりとあらすじをば。

スチームパンク世界の二重人格少女フィンリーは友達以上恋人未満(キス済み)の英国公爵様と仲間を救いに遥々飛行船でニューヨークまでやってきたのだった。以上。ちょっとざっくりしすぎですか。
助けたいのは超高速カウボーイ青年で、彼は若かりし頃の恋人を人質にとられニューヨークギャングのボスに協力をさせられています。というのも、彼は英国に逃げる際ボスの持っていた特殊な装置を盗んで分解、ニューヨーク各地に隠しており、ボスはなんとしてもそれを手に入れなければならなかったからです。
で、フィンリーはボスに近づくためにギャングに潜入、ドキドキハラハラ……みたいな。
いわゆるヤングアダルト? ラノベ? ロマンス多めな感じです。

文体は翻訳本なので安定……といいたいんですが、ちょっとクセがあり、私にはあまり合わなかった感じです。基本は三人称の一元でしょっちゅう視点人物が変わるタイプ。必然的に自由間接話法で一人称付きの内言が多め。私もしょっちゅうやる書き方なのでそこはあまり気にならないんですが、主人公を含め女性が視点人物になったとき、なかなか強烈に女言葉なのが気になって気になって読むのに時間がかかってしまったのです。
これ私は初めて自覚したんですが、セリフで「~だわ。~よね」とかでてくるうちは平気なんですけど、地の文で頻発されると集中が途切れてしまいます。平気な人はたぶん平気なので、そこはもう読んで試してみて下さい。


んではお気に入りポインツ!
これはもうスチームパンク世界+エーテルがどうだというファンジター要素ですね。実はと隠していたわけでもないんですが、スチームパンク小説って初めて読んだかもしれません。基本はヴィクトリア朝でエドワーディアンをプラスって感じなので、単純に私が好きなファッションやら調度品やらが頻出してくれます。なんとニコラ・テスラも出てきてマッド・サイエンティストっぷりを発揮! でも実際のとこテスラって革新的すぎてバックミンスター・フラーなだけでマッドじゃない気がするんですが、まあそこはお約束ですよね。テスラは霊界からクレーム通信を入れていいと思います。

お気に入りポインツ2!
女性作家らしいとか書くと今の時代アレですが、でも主人公の着替え回数と内容の紹介が丁寧で素敵です。スチームパンクのお約束もあってしょっちゅうコルセットの描写があります。そも一作目のタイトルとか『少女は鋼のコルセットを身に纏う』ですから、コルセットをつけた暴力メイドを書きたくて始めたシリーズと言っても……さすがに過言かもしれません。


この先は気になるポインツ! ネタバレ強めです。




気になるポインツ1!
主人公フィンリーの暴力性と攻撃性と恋愛脳がわりとキツく感じました。元が貴族のメイドって設定で、乙女人格と暴力人格があって、現在は統合中って設定なのもあるのだとは思います。けど、このフィンリー嬢、公爵閣下にときめいた一行後にぶん殴ってやりたくなったりした三行後には私ってバカバカ! みたいな感じを見せつつ見知らぬ女がでてきたら脊髄反射レベルで痛めつけてやりたくなり……前にこえー女キャラ好きとは書きましたが、これはこえー女っていうより怖い女です。微妙なニュアンスの差。

気になるポインツ2!
あんまり戦闘描写は好きじゃないのか、ロマンス要素が強めだからか、バトルがかなりざっくりしております。長々やられても困るのはそうなんですけど、なんだか圧がありません。ダメージ描写も生々しいようで地味というか、なんだろう迫力に欠ける印象を受けました。そういう小説じゃないといえば、それはそう。

気になるポインツ3!
仲間の一人が昔の恋人を人質にされて言うことを聞くしかない、みたいな感じなんですが……この仲間さん視点になると、もしあいつがいなければフィンリーを口説いてただろうとか、他の仲間に好意を抱いてるとか、ほぼ同時期に他の女ギャング(ボス)と付き合ってた時期があるとか……移り気すぎるとは言いませんが、なんか好みじゃないのかノリにくかったです。最終的に衝撃の事実が発覚するんですけど、結果そうなったときもふーんって感じに。

気になるポインツ4!
仲間の無愛想脳筋スチパンサイボーグマンがいて渋くてカッコイイじゃんと思っていたら終盤で十代ということが発覚して脳がバグりました。完全に30くらいをイメージしてました。考えてみれば仲間のメカニック女子と付き合ってるから30だとアメリカ的にNG気味な設定なのでありえないんですけどね。もうちょっと早く言ってよ! みたいな。まあ癖に従って早とちりした私が悪いです。

気になるポインツ5!大ネタバレ!
敵のボスが取り戻したがっていたのは壁をすり抜ける装置だったのだ! からのあいつはお宝のすげーダイヤモンドをパクリにくるからそこを捕まえよう! ……えっと、ギャングっていうか窃盗団だったのかな? あと途中までさんざん殺してやりたいとか痛めつけてやりたいとか怖い思考を繰り広げていたのに、いざ捕まえる段になって犯罪を起こしたところを現行犯で捕まえないと警察は何もしてくれないとか言い出しまして、一瞬ポカンとしちゃいました。なんかアメリカ的な制約なんですかね? アメコミも基本的には事故とか不可抗力以外では敵を殺しませんもんね。だとしたらラストバトルとその顛末についても納得です。商業出版においてルールは何よりも大事なのです。たぶん。



まとめ。
スチームパンクものを読むのは初めてだからなのか、なるほど世界設定すごく新鮮……とまではいかなくとも、面白かったです。
一方でストーリーとキャラクターは私には合わなかったです。特に主人公のフィンリーがこう、前時代的な表現ですが、ザ・ヒステリック。アメリカのソープオペラ文法に照らせば敵役のクイーンビー的なキャラです。絶対に金髪でチアリーダーでブルネットをいじめてるみたいな。あくまで個人の感想なので、読む人によっては印象が違うかもしれませんね。あと私は強めの女言葉に引っ張られたのもあるかも。
ほんで私はヤングアダルトの女性主人公系の造詣がめちゃ浅なのですが、前に読んだのも今回のも全編ほとんどロマンスな恋愛ムーブなのは偶然なんでしょうか? それとも全体の傾向なのでしょうか? 単にお国柄? わかりません。

さて次は……前まで書いてたのでネタに使ったものの、本当にそういう話だったっけ? となったのでひっさびさに名作に手を出すとしましょう。


明日のラッキー思いつき嘘知識
『スチームパンク小説とは、もしゲームのダウンロード販売で有名なSTEAMが世界を支配したらという想定で描かれたユートピア小説群である』

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