再開直前/【戦力再編】戦争代理人 あらすじまとめ(ネタバレあり)

 二一世紀半ばに起きた、全世界を巻き込んだ動乱――『大分裂』時代。国家間の戦争は封印され、協定に基づく安全保障の下、国家間の係争解決は戦争の代替行為である調停紛争に託された。
 調停紛争において国家に代わり、戦闘指揮を執るは「戦争代理人」。見知らぬ国の命運と憎悪を背に、彼らは戦場へ臨む。

【第一部■戦争無き世界】
 謎の組織・アカルナイ委員会との協定により、国家間が直接争う戦争が無くなった二二世紀。国家間の係争における最終的な解決手段として、戦争の代替行為である調停紛争が行われていた。
 調停紛争の結果に準じた当事国への制裁が行われ多大な犠牲が出ても、調停紛争は繰り返されていた……。
 そんな世界で失業状態にあるフリーのシステムエンジニア・滝沢陽輝は、人生に躓いた若者だった。
 明日も見えないような日々、周囲ではさまざまな事柄が鬱積しながら、世界は確実に動いていく。
 そしてある日。陽輝の身近な人々が旅行で訪れた国が調停紛争の当事国となる。一切の往来が遮断され、制裁の対象となる南国の島に危機が迫っていた。


【第二部■墜ちていく星】
 失業状態にあるフリーランスのシステムエンジニア、滝沢陽輝のもうひとつの顔。それは「第七の剣」の階位を持つ、戦争代理人だった。
 一世一代の戦いを終え、調停紛争から遠ざかっていた陽輝の下にもたらされた話。
 それは調停紛争を取り仕切るアカルナイ委員会、その内部の噂――裏切り者についてだった。想定外の話題だが、今の自分には関係ない。そう思っていた陽輝の下に、海外で立て続けに起きた国境紛争や領土侵犯の報がもたらされる。
 歴史が動き始めたのか、誰かが何かをしようとしているのか。
 そんな中、調停紛争を担当した戦争代理人が、意図的に行った過剰戦闘で自らの当事国に多大な制裁を科せさせた、という疑惑が生じる。
 “戦争無き世界”を構築している委員会に協力するため、陽輝は再び調停紛争に臨む。


【第三部■新世界秩序】
 調停紛争が頻発し、世界各地で繰り返される制裁。
 陽輝が不穏な空気を感じている日々の一方で、幼なじみ・菜々美の父がアメリカ三国へ旅立つ。
 順調に推移し始めた日常で、戦争代理人を辞して平穏な人生に戻ることを陽輝が模索していた頃。
 世界の裏側ではアカルナイ委員会の一派が列強各国との間で、隠密の約定を取り交わしていた。
 菜々美の父が赴いた東部アメリカ側の戦争代理人として、イギリスとの間で行われる調停紛争に挑む陽輝。
 制裁の重圧がのしかかる陽輝が指揮する艦隊の前に、歴戦を誇る強大な戦争代理人、“戦車”率いる艦隊が立ちはだかる。
 白夜の季節を迎えた南極・ソモフ海で死闘が始まった……。


【第四部■失墜の日】
 調停紛争に勝利したものの、守りたかった人は傷ついた。
 悶々とした日々を過ごしていた陽輝だが突然、自宅が崩壊する。聞き覚えのある轟音は、地上を容赦なく襲う『鉄槌』による攻撃だった。
 世界を支えていた秩序、価値観、平和……築いてきたすべてのものが崩れ、失われていく……そして陽輝に突きつけられた、残酷な現実。
 同じ頃、世界各国ではほぼ同時進行で軍隊や官憲によって、アカルナイ委員会関係者と戦争代理人の摘発が始まっていた。
 故郷を追われ、戦いに身を投じる戦争代理人たち。摘発は日本でも行われていた。陽輝らの周辺にも、国防軍の精鋭部隊が迫る。
 そのような中、アカルナイ委員会分派勢力である“解放の巨神”は世界に向けて、委員会からの離脱を宣言する。


【第五部■剣を抜く者】
 アカルナイ委員会は『鉄槌』の機能停止を告げ、各国との間に締結していた協定破棄を宣言。陸続きの国家間では越境しての領土紛争が立て続けに発生し、“戦争無き世界”は崩れ去った。
 日本を脱出し、インド洋中央の環礁に身を潜めていた陽輝らが更に南、ケルゲレン諸島への移動を考えていた時。
 “解放の巨神”が率いる大艦隊が複数の方向から、インド洋へ進出してきた。
彼らの目的もアカルナイ委員会の本流、中枢委員会の逃亡先となったケルゲレン諸島の制圧である。
 これに対し、階位を“剣の王”進められた陽輝はケルゲレンでの籠城を選ばず、圧倒的多数である“解放の巨神”艦隊の迎撃を宣言する。
 広大なインド洋、陽輝は神出鬼没の奇襲を繰り返し、複数の艦隊を相手に互角以上の戦いを行う。
 そして“解放の巨神”の実質的な盟主、戦争代理人“運命の輪”との戦いに臨んだ。


【第六部■世界の欠片たち】
 “解放の巨神”との戦いを進めるには、戦力を確保する必要がある。
 ケルゲレン入りした陽輝は陽動を兼ねて、委員会の艦艇を建造する南極工廠の制圧に向かう――“石に刺さった剣”作戦の始まりである。
 これに呼応し出撃したセント・ヘレナ駐留の“解放の巨神”艦隊を、“硬貨の女王”ヴァルターの艦隊が迎撃する。互いの腹を探り合う、南大西洋の戦いの火蓋が切られた。
 一方、南極工廠に着いた陽輝が出会ったのは、レオと名乗る南極工廠の管理人――“運命の輪”を父だと言う、実体を持たない少年だった。
 人との会話を楽しむレオだったが……。
 南極工廠での策謀が進む一方、南大西洋の戦場では“戦車”がセント・ヘレナ駐留艦隊の全戦力を以て、“硬貨の女王”艦隊を包囲しようとしていた。


【第七部■東方美人】
 地上の国家からの支持を受けない限り委員会の存在意義は無く、戦場の戦いだけで勝利を得ることは出来ない。
 そう判断した陽輝は東アジアの島国・自由台湾共和国へ潜入する。
 久しぶりに訪れた人の住まう領域で、陽輝は世界の実情を目の当たりにする。
 その台湾には、大陸からの野心が迫っていた。
 “解放の巨神”との密約で手に入れた、小型化された融合炉と推進機構のサンプルを使い空を征く巨大艦を建造した武漢政府は、台湾への侵攻を試みる。
 それらの陰謀を共和国軍の重鎮・麗女将軍に伝え、陽輝は政府との接点を手に入れる。
 そしてその日。台湾本島では一斉テロが始まり、社会は混乱を極めた……。


【第八部■寄生木たちの野望】
 自由台湾共和国との間で接点を築いた頃。
 閉塞感に包まれていたケルゲレンでは、“数字札”の戦争代理人たちの間で不満がくすぶっていた。
 野心を燃え上がらせる者、野心を見張る者、そして謀略を巡らせる者……さまざまな思惑が交錯する。
 ケルゲレンを統括する“棍棒の女王”グラハムは、委員会のもう一つの工廠であるシベリア工廠制圧作戦を承認した。
 その裏で発動される“荷車の騎士”作戦……絡み合った謀略の蔦は、シベリアの戦場に芽吹く。
 そんなケルゲレンの動きを詳細につかみ、「狐狩り」を画策していた“解放の巨神”はユーラシア大陸北辺に艦隊を伏せ、待ち伏せていた……。


【第九部■砂楼】
 シベリアの北方、北極海で始まった戦い。
 遁走するシベリア派遣艦隊は“解放の巨神”艦隊の追跡と幾重もの待ち伏せ攻撃を受けていた。
 脱出を試みた“硬貨の騎士”率いる艦隊も、大アルカナの戦争代理人“力”と“正義”の艦隊に捕捉され、包囲される。
 その囲みを後方から、陽輝が率いる中枢委員会側の艦隊が襲撃した。
 ケルゲレン内部の不穏な空気とそれを扇動する者、煽られた者たちの焙り出しと粛正、そして“解放の巨神”戦力の撃滅が“荷車の騎士”作戦の目的だった。
 ウランゲリ島沖では、“硬貨の女王”が“戦車”との再戦に挑む。
 そして逃走する“力”艦隊を追撃した陽輝は、待ち伏せていた“運命の輪”艦隊と正面からぶつかった。
 互いに退くことの無い戦いで陽輝と“運命の輪”、それぞれが乗座する旗艦も大破する……。
 ケルゲレンではシベリア派遣艦隊壊滅の報を聞き、脱出しようとする戦争代理人たちが現れていた。
 彼らを捕らえ処分を下した後、ケルゲレンを“解放の巨神”からの使者が訪れる。
 一方、帰投した“解放の巨神”艦隊は勝利といえる戦果は上げたものの、甚大な被害を受けたことから、戦力回復までの実質的な謹慎が命じられた。
 大アルカナの戦争代理人たちは不平不満を抱きながら、それぞれの任地へ遠ざけられていく。
 そして“運命の輪”は“解放の巨神”の盟主・“皇帝”がいるヴェネツィアへ身柄を移し、実質的に軟禁状態とされた。しかし、彼の瞳は力強く光る……。
 同じ頃。情報収集艦ウラニアに乗座した陽輝は、ヴェネツィアへ向かっていた。
 “解放の巨神”の盟主・“皇帝”から受けた、和平の提案。その交渉の席へ向かう途上である。
 それが“皇帝”の画策する陰謀であると承知の上で、陽輝は敵地に向かっていた。

そして……【第十部■虚像の橋】へ。

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