本作を書いた背景などは、あとがきで触れたので、ここでは技術的な課題に関する雑感を少々。
本作は当初、連作短編の形式で、1話ずつは完結しながら、全体に大きなストーリーが流れているというスタイルを狙っていたんですが、残念ながら上手くいかず、結局早々に諦めて、長編にしてしまいました。
こういう連作短編というのは、最初から設計しておかないと難しいんですね。反省するとともに、次回以降の作品でもう一度トライしてみたいと思います。
それと、あとがきにも触れたのですが、戦闘機のパイロットの呼称は複雑で、この処理がまた難しかったです。
具体的には下記。
1.本名(ファミリーネーム)
2.本名(ファーストネーム)
3.TACネーム
4.コールサイン
1、2の本名は、パイロットに限らず、外国人を登場させる時に、いつも気を使う点です。外国人の場合は会話の中ではファーストネームで呼び合い、ミスターや階級を付けたりするときや、地の文ではファミリーネームを使う事が多いですね。
今回はそれに加えて、3のTACネームと、4のコールサインが絡んでくるわけです。
パイロットの話なのに、管制塔とファーストネームで呼び合うのでは、リアル感がありませんよね。パイロット同士の会話では、TACネームでなければ、リアル感がありません。
でも、(軍の)関係者意外と話すときには、ファーストネームでなければリアルでないし、物語の性格上、階級付きの名前も飛び交うので、ここではファミリーネームじやないとおかしい。
だから、4つの使い分けは、本当に気を遣いました。
松田涼子を宮本がどう呼ぶかも問題でした。宮本の視点の時と、涼子の視点の時とで、地の文も使い分けをしたりして。
これらとは別の問題もありました。
連載形式で、多人数が登場し、しかも外国人というのは難題です。登場人物一覧が無いと、読む方が混乱してしまうんですね。
問題はそれをどこに置くかです。
今回は各章の最後に置いて、更新していく形式にしました。
これはカクヨムのシステム上の問題を回避するためです。
本来なら、一番最後に固定しておけば良いのですが、その方法を採ると、カクヨムでは新着に表示されなくなるんです。
カクヨムでは新着程度しか導線がありませんから、死活問題とも言えます。
一番最初に書いた『ホンファの一日』では、それを知らなかったために、結局新着に一度も表示されることなく完結してしまったんですよね。これは今考えても残念です。
だから今回は、連載中は各章の終わりで、登場人物が増えるごとに更新していくという手段を採った訳です。このやり方は苦肉の策。
スマートではないので、いつかシステム的に改善して欲しい点です。
こんなような事を考えながら書きあげました。
でも、一番狙ったのは、疾走感、スピード感、浮遊感ってところです。