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ピクルスの瓶が開かない時

 おお!ピクルスの瓶よ!
そなたの蓋は何でこんなにも固いのか!

おお!ピクルスの瓶よ!
そなたは何でこんなにもデカいのか!

 その蓋は回すに回せず、割ることも出来ず、
ただ絶対の拒絶がそこにあった。
 私は古代の神話を思い出し、蓋の前で
律動を伴った動き、”踊り”というものをしてみるが、
それでも蓋はピクルスを固く封印していた。

 ピクルスとは酢漬けにされたキュウリを
マスタードの粒やトウガラシ、
それらを煮込み、ローレルの葉で香り付けしたものだ。

 私は神に祈り、掲示をもとめた。
すると何という事だろう!ピクルスの瓶の蓋は
その蓋の封印の際に、中の空気を抜いている。
 つまりこれは蓋は蓋と瓶の工学的摩擦のみならず、
空気圧を利用した、熱力学的封印をも同時に
行っているという事だ。

 私は考えをめぐらした。
 ねじるといった正攻法では、ピクルスの蓋は
決して開かないだろう。

 私は蓋の下部を観察してみることにした。
するとどうしたころだろう。蓋には細かく”爪”が存在した。

 明らかに加工の程度が低いだとか、
輸送中の事故によって曲がったといった理由で
できたものではない。
 この突起には何か生まれた理由がある。
 私は意を決して、スプーンの柄をその”爪”に差し入れて
瓶と蓋の間に梃の原理で外側へのモーメントを発生させる。
 するとどうしたことだろう。空気の抜ける音がして、
空間にピクルスの匂い、ミアズマが満ちる。
 この瞬間、私のいる世界とピクルスの瓶の中の
隔絶された空間が接続された、匂いはその事実を示していた。

 サンドイッチに使ったらうまかったです。

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