本当に怖かった本として真っ先に浮かぶのは、貴志祐介さんの『黒い家』です。
小説によっては、人が殺害されるシーンを生々しく描き、ホラーといいながらも最早スプラッタの様相を呈しているものも少なくありませんが、『黒い家』はその辺りの描写はさほど怖くありません。
それよりも、人間が持っている怨嗟というか狂気というか、そういった部分を克明に描き出し、読み進めるほどにまさにゾッとさせられます。
読み終えてから数日は、夜のトイレや、お風呂で頭を洗う時などが本当に恐ろしかったです。
バラバラ殺人などの、より残酷な場面を頻出させて怖がらせるのではなく、人間の暗闇を見せることで読み手に怖気を震わせるような作品は、滅多に出会えないような気がします。