• 現代ドラマ
  • 現代ファンタジー

【読書感想文】奈須きのこ「空の境界」(ネタバレあり)

どうもお久しぶりです。一ヶ月以上あきましたね。別にサボっていたわけではありません。超巨編を読んでいました。はい、本当に巨編です。上中下とあり、10cm以上は確実の分厚さです。誰がどう見ても巨編でしょう。本来なら数をこなすためにこういった巨編は敬遠してしまうのですが、TYPE-MOON好きとしては通らなければならないという信念で読み切りました。がんばりました。誰か僕を褒めてください。
さあ、早速見ていきましょう。

あらすじ:事故により2年間昏睡状態であった少女・両儀式と、その周辺の人物を巡る物語である。

おすすめ度:上の中(一括りで語るのがもったいない)

いやぁ、迷ったんですよ。なにを迷ったかと言うと、これを一つずつ分けて書くべきか。しかし、これはあくまで読書感想文であって、僕らは物書きの身なので、そこまで時間をかけられないと言うことで、特に印象に残った章を二つ紹介しようと思います。とは言ってもありきたりな章だと思うので過度な期待はしないでください。

まずは「矛盾螺旋」です。とあるマンションの住人が同じ死を繰り返す奇妙な現象を式とそのマンションの住人・臙条巴が解いていく。どちらかというと本格ミステリに近い様相を呈したものです。物語の途中にはマンションの構図も表示されていて、分かりやすいですし、それが巡り巡って推理のヒントにもなります。きのこは小説を作るにあたって綾辻行人さんなど新本格ミステリにインスピレーションを受けたらしく、それを彼女の世界観で見事に表現しています。後半はバトルものになりますが、その描写もとても細やかで目の前に映像がありありと表示されているようでした。

次はなんと言っても「殺人考察」じゃないでしょうか。突如街に現れた殺人鬼が式ではないかと疑いがかけられる。主人公の黒桐は彼女の疑いを晴らすべく行動に出ます。この章は上・下で離れており、それぞれ四年前・現在と時間軸も変わっています。しかし、そこに通底するのは人を殺すことの意義でした。殺人とは人の理性が限界を超えたときに起きるもの、殺戮とは日常生活の一部に人を殺すことが入ってしまったことと言う考察はとても興味深かったです。

奈須きのこが牽引するTYPE-MOON作品は一つの世界観でとても細やかに作り込まれているので、創作に携わる人は一度はどれかチェックするべきジャンルだと思います。ただ、物書きが彼女から文体を学ぶのは一考の余地が必要かもしれません。何しろ、奈須きのこは自身も言ってる通り「ゲームクリエイター」であり、作家ではありません。なので、文体はとても独特で読んでるこちらのスタイルがぐちゃぐちゃになってしまいそうでした。なので、彼女の作品はどちらかと言うと小説やラノベとはまた違った文の集合体として読んだ方がいいです。
ラノベでも文芸でもない奈須きのこ作品ですが、そこにあるテーマはアカデミックでも十分議論されていいレベルの内容です。なので、論考を深めたい方はぜひとも読むべきと言うことで、おすすめ度を上にしました。中にしたのは長すぎて疲れたからです。

さて、ここまで語ってきましたがいかがでしょうか。この小説はこれだけに限らず、他にも興味深いエピソードがたくさんあります。ぜひ一度は読んでみてください。ただ、最後に一つだけ忠告を。これは容赦ない残虐表現が多々見受けられます。そこが許容できる方だけお読みください。

次は普通の文庫本になるので、一週間後になると思います。まあ気長にお待ちください。それじゃあ、またぁ〜。

2件のコメント

  • こんにちは。
    めちゃくちゃ懐かしいものを読みましたね。
    僕はタイプムーンという存在をこの本で知りました。
    講談社ブックスの読者だったのです。

    『DDD』という、講談社BOXのシリーズ作品があって、こっちもオススメです。
    続編を待っていたのですが、まだ出てないですね。
    未完でも良ければぜひ。世界観好きです。


    空の境界、また読みたくなってきました。
  • ぎざさん、お久しぶりです。
    僕自身、Fateが大好きで、あの世界観を理解するにはTYPE-MOON作品を読まなければならない、ということで手を出しました。経緯は逆ですね笑

    「DDD」も時間があれば読んでみようと思います。ずいぶん前に初刊が出たと聞いてましたが、まだ未完なんですね。まあ、きのこ自身、とても忙しい身ですから気長に待つしかないですね。
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する