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【読書感想文】夏目漱石「琴の空音」(ネタバレあり)

どうも、最近暖かくなったり、かと思えば寒くなったりと不安定な日々ですね。体調を崩しやすい権兵衛は自粛要請も相まって終始床に入りっぱなしです。
一方の私、名無之は卒研が本格的に動き出し、友達の宿題を写していたツケが回って来て目が回るように日々がすぎていきます。

さて、そんななか今日お届けするのは夏目漱石の「琴の空音」です。ずいぶんマニアックなところを攻めたでしょう。これは短編なのですが、私たちが文章力を鍛えるために行っている写生で出会った作品です。

では、早速見てみましょう。

あらすじ:法学士の主人公が久しぶりに友人の津田を訪ねる。主人公の婚約者がインフルエンザだと聞くと、幽霊を研究している津田は最近インフルエンザから肺炎になって死んだ親戚の若い女性の魂が出征中の夫に会いにいった話をする。

おすすめ度:中の上

 中の上と書いていますが、決して漱石を愚弄している訳ではありません。僕らがおすすめしたい作品はやはりエンタメ作品が多く、こういう文学となるといまいちおすすめする人がいない訳で、作品のレベルで言えば上の部類に入ります。
 この話の面白いことは最初は幽霊を信じなかった主人公が、次第に幽霊を信じるようになり、仕舞いには自分の死・愛する者の死を意識し始めてしまうという、心情の変化をおもしろおかしく書いているところなんですよね。
 しかも先が気になるその時に限って紆余曲折な会話をするんです。すると何が起こるかというと、読者は痺れを切らしてもっと早く先を読もうと読むペースをあげるんです。事実、僕らも何箇所かで写すより先を読んでしまったことがあります。そして決まって最後には安心させてくれるので、読者はやられたと思ってしまう訳です。つまり、漱石はこの物語を通じて主人公だけでなく、読者である我々の心情をもコントロールしてるんです。本当に素晴らしい。五体投地です。

 ここからはこの作品だけに限らないんですけど、漱石は本当に文章が上手いなとつくづく思ってしまいます。若輩者の僕らが言うのもあれですがね(笑)。彼って決して難しい言葉を多用しないんですよ。その場、その情景に合った言葉を的確に埋めてくるんです。それは下町の言葉から古文書、はたまた中国の詩まで幅広く、どうやったらそんな言葉がぽんぽん出てくるのか不思議で仕方ないです。まさに、近代のRー指定みたいな感じですね。

 権兵衛自体は高校の頃から彼の文章に魅入っており、彼のような文体を目標にしてるんだそうです。まあ、ここまで書けばお分かりかと思いますが、あの物語のあの子は、そう言うことなんですよね。

 まあ、かくゆう僕も漱石のことを尊敬している一人なのでここまで語ってしまった訳ですが。ちょっと筆が走りすぎましたね。

 それじゃ、今回はここくらいで。

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