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王立海軍完結によせて

 どうも!いつも読んでいただいて、ありがとうございます。
 先日、ついに拙作「もしもし?こちら王立海軍要撃隊です!」が完結しました。これもひとえに、読んで応援してくださる読者の皆様のおかげです。
 今日はあとがき的なのをつらつらと。
 色々迷ったんですが、想定していたラストを書くことにしました。

 最終話、戦争から数年後のウルスラ王国でオリンピックが開かれます。
 近代オリンピックの歴史を紐解けば、19世紀末にクーベルタン男爵が提唱した平和の祭典、それが全ての始まりでした。時は帝国主義の時代、まだ人類にとって戦争が「有意義な事業」として認められていた価値観の時代でした。
 実際、オリンピックは二度の世界大戦で中止を余儀なくされています。
 なので、IOCの規約でも「戦争以外では中止されてはならない」とあります。
 また、時にはナチスドイツの国威発揚に使われたりと、その時代その時代で危機に直面し、その都度乗り越えてきた経緯があります。オリンピックの開催もそうですが、その存続もまた平和に向けての大きな試みであった訳です。

 しかし残念ながら、その崇高な理念は既に死に絶えました。
 今のオリンピックは、一部の特権階級が利権を貪るために存在する、商業主義の産物になってしまいました。アスリート・ファーストは勿論、開催都市への配慮も失われています。それは、酷暑の真夏に東京で五輪を開催するということからも明らかです。
 五輪を成功させなければ、次の五輪が開けない。
 しかし、そうした手段が目的化し、発生する多額の資金に目のくらんだ人たちが私物化しているのが現状です。多額の放映権のため、スポンサーである米メディアの都合で開催時期を夏にせざるを得ないIOC。彼らは平和の祭典を司る身でありながら、五輪が開かれるならば中国共産党にもすり寄るという、実に無残な醜態を晒しています。
 皆様の中にも、連日の五輪報道でうんざりという方もいらっしゃるでしょう。

 正直、迷いました。
 ラストシーンは、これは東京五輪(1964)のオマージュです。
 あの時、ブルーインパルスが飛んだ空は、それはそれは美しい日本晴れでした。あれ、凄いんですよ…開会式の会場で、聖火の点火と同時に平和の象徴である鳩が空を舞う。皆がそれを目で追って、無数の羽撃きを見上げていると…ブルーインパルスが、丁度その方向から飛んでくる。そしてドン!五輪マーク!
 因みに、ぶっつけ本番での初めての成功だったそうです(笑)
 練習では、一度も成功しなかったそうですね。
 昭和の東京五輪には、国民の全てがそうではないにせよ、希望を願う祝福のムードがありました。ただ、今はそれを求めるのは酷でしょう。まして、IOCを中心とする利権集団を優先して開催を強行し、国民の生命と財産が脅かされ続けてるのが現状です。
 辛いですね。
 悲しいです。
 でも、数年前にこの作品を書き始めた時は、コロナウィルスなんてなかったし、自分も知識不足でした。近代オリンピックは堕落した…でも、大きな改革で膿を出し切れば、もしそれが万が一にも可能ならまだ希望はあるでしょう。
 そうした気持ちも込めて、予定通りのラストシーンを書かせていただきました。
 既にもう、今の東京五輪は「進むも地獄、やめるも地獄」の状態です。
 この上は、せめてアスリートたちにとってはいい競技大会になればと、切に祈るばかりですね。

 閑話休題。

 もともとこの物語は、古いブラックジョークから生まれました。
 プロローグの冒頭にもあるように、海のない山国に海軍が生まれるという、途方もなく矛盾した発想から始まりました。そして、北欧の小国が全世界を相手に防衛戦争をやるハメになるという、とてつもないスケールの物語に発展します。
 僕自身もマクロスシリーズ等が好きだし、航空機が好きで書き始めました。
 想定していたよりも長期連載の長編になりましたが、無事に着陸できたようです。
 実は、わりと雰囲気や演出重視で、細かな科学考証やSF設定はあまりしてません。そもそも、核爆弾を何十発も同じ場所に落とすとどうなるかとか、深く考えてはいませんでした。ただ、なにかやべーものが埋まってて、それを列強各国が奪い合った…そのストーリーラインの上で、自然に発生した要素の方が多いですね。

 また、本作は珍しく「主人公視点以外の話が数多く存在する」という、ながやんの小説にしては稀な試みがなされています。時にオーレリアの視点であり、フリメラルダの視点であり、敵側のキャラクターから見た物語の進行もありました。
 普段は、なるべく主人公だけに視点を固定し、主人公を通して物語を読んでもらってます。でも、こうした群像劇的な作劇も楽しいですね。やってみてよかったと思います。
 あとはそうですねー、エリア88とかエースコンバットの影響がデカいですね(笑)
 今度は機会があったらまた、変形しない戦闘機で空戦モノを書いてみたいと思います。

 最後になりますが、ラストまでお読み頂き本当にありがとうございました。皆様の応援がなかったら、ここまでの執筆は正直難しかったかと思います。改めて、読者の皆様の存在に感謝し、期待に応えてゆくことの楽しさと喜びを再認識した次第です。
 次回作も次々と書き始めると思うので、よければ是非また楽しんでいただければ幸いでっす!

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