かつて「ベニサン・ピット」という名の小劇場が、東京下町にありました。
はい。実際にあったんですね。都営地下鉄新宿線森下駅で降りて数分。
ほんとにちいさなハコで、客席と舞台がほぼ同じ空間という臨場感。
TPT(Theatre Project Tokyo) デヴィッド・ルヴォー氏演出の舞台。
堤真一さんや豊川悦司さんを、かぶりつきで見られるという贅沢。
カッコ美しかったのは、麻実れいさんだったな。J・コクトーの双頭の鷲。
……というのが、今回書いた「演劇青年シンジケートの野望」の
舞台になった場所。話自体はまったくのフィクションです。
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ちょこちょこ舞台観にいくのすきでしたね。
最初は大学で採ってた演劇論の課題で何か観に行くことになって
松本幸四郎さん(現・松本白鸚氏)の「ラ・マンチャの男」だったな。
演劇論の教授がとある俳優さんの奥様で、その先生がカッコヨクて。
とにかくシェイクスピアを散々読まされ(若干アレルギー)
他にも訳わからん戯曲をいっぱい読んだな。
セールスマンの死、ゴドーを待ちながら、欲望という名の電車……。
どこかで上演されれば観に行った。すきなのはギリシャ悲劇でした。
友人が鴻上尚史さんのファンだったので、第三舞台や
友人の友人が出演してる関係で、三宅裕司さんのSET観に行ったり。
今まで一番心奪われたのは、野田秀樹さんの「キル」
脚本も、舞台美術も、衣装も、俳優さんも、凄くすきだった。
キル、Kill、切る、着る、言葉遊びの妙。
ミシンがカタコト音のする室内の情景から、モンゴルの草原まで。
舞台って不思議だよね。同じ空間に違う風景を描き出す技術。
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今回の短編コンテストに、どうしても2作書きたかったんです。
1本目は、みなさんにも言われてる通り、六月ワールド。
透明な、淡い、と形容して頂く、私の一つのテーマでもある 雨。
そして、今までの殻を破るような、新しいジャンルへの挑戦。
2本目は、最初はただのコメディ、ネタ。毎日自分の中で漫才してた。
それを演劇というテーマを通して、自分なりの思いを伝えたくて。
今回、この短編書くにあたって、ただの一観客の私は
演劇経験者の友人に意見伺って、一度はボツになりかけましたが
ドシロートという視点に帰って、再び提出することと相成りました。
見捨てず、つき合ってくれて感謝です。
よかったら、ニューワールドにおつき合い下さいませ。
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レビュありがとうございます。
*圭琴子さま
レインドロップにすてきな言葉を書いていただいて、嬉しいです。
琴子さんには、いつもハッとするレビューを書いて頂き
そうかー、そうなんだぁーって、作者が気づかされたりしております。
両片想い、刹那の涙色の恋、うぉうーって。
ええ、私としては、これも恋だと思って書いてみたりはしたのです。
なぜ星也は泣いたの?とある人に聞かれて、いや俺、それ言っちゃったら
この話、書いた意味がないじゃんって。笑 どうやら伝わってない……。
涙玉の涙は、誰の涙なんでしょう。
*七瀬夏扉さま
シンジケート、男性にも読んで頂けて、本望なのですっ。
今までと少しちがうねって、思ってくれないかなぁって。笑
最初はコメディしか考えてなくって、そして恋を入れ込む必要があって
まずは、なかよくさせてしまいました。ベタベタ。
でも、演劇をテーマにしたから、少しでも本質に近づけたらいいなと
ドシロートは思ってみたわけなのです。
書いてて楽しくて、仕上げはちょっと大変という感じでした。
お気に召していただけて、めちゃくちゃ嬉しいです。