翌日。
早速、ローエングリン侯爵が開設した元帥府に連絡をしてみた。
ウルフ先輩から話は通っていて、短時間ではあるが今日の午後面会予約がとれた。
俺は帝国軍の制服に入念にアイロンをかけ、ブーツに磨きをかける。
辺境星域の男爵家令息だからな。
使用人を雇う余裕はない。
俺は帝国士官学校を卒業した貴族なので、階級は少佐だが帝国軍の部隊に所属していない。
あくまでジャガー男爵領の貴族領地軍の所属だ。
だから従卒もつかない。
全て自分でやる。
シャワーを浴び、昨晩の酒を抜いたら、元帥府へ出発だ。
元帥府は、宇宙艦隊基地のすぐそばに建つシンプルなビルだった。
新築であること以外は、これといって特徴はなく、貴族的な装飾もない実務的な雰囲気だ。
面会の順番を待つ間に、受付にいる少尉に話を聞いてみた。
「ローエングリン侯爵閣下の元帥府としては、いささかシンプルに過ぎる気がするのですが?」
「閣下は機能性を重視されたと聞いております。それから『貴族趣味の華美な建物に予算をかけるくらいなら、巡航艦を一隻買った方が良い』とおっしゃったそうです」
「ほう! それは、なかなか!」
名より実を取る姿勢は好感が持てる。
俺も貴族だが、辺境星域の男爵家だ。
余計なところに金をかける余裕はない。
すぐに順番が来て、ローエングリン侯爵の部屋に通された。
ローエングリン侯爵の部屋も、シンプルだった。
広い部屋に、大きな執務机と応接ソファーとテーブルがあるだけ。
そして、部屋の主――ローエングリン侯爵がいた。
俺は慌てて敬礼をする。
豪奢な金髪!
整った美しい顔!
流麗な敬礼に、思わず見とれてしまう。
しかし、両目は鋭い視線を放っている。
この人は軍人なのだと、嫌でも感じさせられる。
すぐにソファーに案内され、商談が始まった。
「ウルフ准将から話は聞いている。大量の食料を売ってくれるそうだな?」
「はい。冷凍コンテナ処理をしたジャガイモを領地から運んで参りました。大型輸送船五隻分ございます」
「うむ。食料はありがたい。ウルフ准将の紹介だ。少し色をつけて全て買おう」
「ありがとうございます!」
「詳細はダルメシアン大佐と話してくれ」
面会は終った。
そのまま元帥府のダルメシアン大佐に面会だ。