幻に出逢う

 もうひとつの青春音楽がある。
 40年近く聞き続けているので、もう重篤と言っていい。
 北米をバスで横断する最中は、ソニーのFMラジオでずっと音楽を聴いていた。
 地域のFM曲で傾向があって、それはもう楽しいもので、嗜好の幅を大いに広げてくれたと思う。

 このバンドに出会ったのはシアトルではなかったかと思う。
 スラップ使いでビートの効いたベースと、小刻みに正確なビート、それに80年代特有の軽くポップなシンセ。楽器数は明らかに少ない。
 苺だけが乗ったケーキでやたらと美味い、そんなバンドだ。
 そしてこのバンドのカセットが、ワゴンで積み上げられて売っていた。明らかに処分品だった。しかもこのカセットは両面A面のように、全く同じ曲構成で、アレンジを変えて収録されていた。
 このテープが帰国後、大学生時代から青年時代にかけて、何度もダビングされて車に乗っていた。当時の彼女たちはこの曲を聴くと、トラウマに陥るのではないか。
 彼らはメンバー構成を変えて、遂にはボーカリストが脱退して、2枚目のアルバムがEpicSonyから日本上陸を果たしている。
 しかしながらこの盤が至高だと思う。
 オリジナルのカセットが伸び切ってしまい、使い物にならなくなった頃、日本にAmazonがやってきた。それで思わずこのバンドを検索してみると、ベスト盤が販売されていて、その一枚が太平洋を渡ってここにある。

 今頃になって評価されてきているのか、明らかにVHSでの荒れた映像が年々YouTubeで増加している。驚いたのはボーカルはベースとギターのツインネックで、その多忙さは筆舌に尽くしがたい。

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