ビストロでランチ

 もう30年の付き合いになるだろう。
 離婚した妻よりも付き合いは長い。
 不思議な縁をいまだに続けている。
 肉体を交わしてはいないが、肌を合わせてはいる。
 その中途半端な関係で今も距離を置いて、たまに時間を擦り合わせている。
 お互いの恋愛の事情はきちんと話してきた。
 むしろ夫婦関係よりも秘密がないくらいだ。
 今もそうだ。
 ある意味で性別の違う自分の半身を見ているような気すらしている。
「みんなで老後は共同の生活をしたいね」
「籍なんて入れたら面倒臭いから、事実婚で共同生活すればいいんじゃない。貴方が料理をして、私たちで庭を作ったり掃除をすればいいのよ」
 そうして「あの子も呼ぼう」とその共同生活のメンバーを指折った。
「ちょっと今日のソテー、バルサミコ薄いんじゃない」
「私にはいい感じよ」
 なんてそんな枯れた生活が訪れることを楽しみに思う。

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