来週にもかつての恋人に逢う。
指折り数えてふたりでデートするのは四半世紀ぶりになる。
それでケーキを焼き冷凍した。
離島からの距離はクールバッグ内での自然解凍に丁度いい。
離婚後に皆が連絡をくれて。
励ましの言葉を投げてきた。
精神的に鬱状態だったので。
彼女らの声が、支えだった。
しかも全員が離婚して独身。
私は伴侶を選び損ねたのではなく、そもそも選択肢から間違っていた。
「貴方のビーフシチューが食べたいわ」
付き合いのある頃には作ってはいないはずだと言うと。
「いえ、こんなレシピだと教えてくれたわ」
そのレシピを聞くと、確かに私のものだ。しかもかなり古いレシピ。今では児戯に等しい。あれからどれだけ厨房に立って研究したことか。
もっと美味しいものを食べさせてあげると返した。
「想い出の味なんだ」
その想い出は上書きさせてあげたい。
そして。