イオリのライバル、マリア・バタイユが登場するのは今回が最後です。
彼女は好きなキャラなので、書きながら名残惜しさを覚えました。
「すべての国家を滅ぼす」
それがマリアの夢でした。
マリアがそう願うきっかけとなった、彼女の悲惨な体験も小説に書いたのですが、投稿直前すべて削除しました。
そのほうがマリアの神秘性が増すと思ったからですが、どうだったでしょう?
カルト教団クルシミも今回終焉を迎えました。
クルシミのモデルはオウム真理教です。
信者が武道を学んでいる点はオウムと同じです。
オウムの信者が空手や総合格闘技に積極的にアプローチしていたのは有名です。
またオウムは人々を殺害するとき「ポアする」という奇妙な言い回しを使いましたが、クルシミではそれを「転生させる」と言い換えました。
「殺す」といわずに「ポアする」とか「転生させる」というと、殺生行動に伴うはずの血生臭さがきれいに消えます。
前にもいましたが言葉とはおそろしいものです。
ただ自分が模倣できたのはここまででした。
信者の内面まで踏み込めなかったのが残念です。
オウムの信者は自分と同世代の人間が多かったので、地下鉄サリン事件が起きたときは衝撃を受けました。
「なぜ彼らはあんな凶行を起こしたのか?」
この三十年間、いろんなジャーナリストや文学者が言葉を費やし事件を語りましたが、芯を食った発言は今までまったくありませんでした。
しかしこの春、カクヨムに投稿された一編の短編小説に自分は衝撃を受けました。
それが秋犬さんの
【あったか漫画クラブ】
です。
全4話5000Wの短編でオウムというか、この世のあらゆるカルトグループに(知らぬ間に)参加していた若者の内面を、これほどいきいきと描いた作品はほかにないと断言できます。
主人公の女子大生が参加するサークル「あったか漫画クラブ」の実態はオウムと明言されていません。
どちらかというと宗教グループではなく、政治的な集まりのようです。
しかし「カルト」というくくりではオウムと同類といえるでしょう。
彼らに連合赤軍の影を見る読者もいると思います。
自分が書きたいと思った信者の内面(あるいは内面のなさ)がしっかり描かれていて脱帽しました。
カクヨムの歴史に残る作品です。
未読のかたはぜひお読みください。
『アガルタのイオリ』はあす最終回です。
みなさんぜひお寄りください!
あったか漫画クラブ 秋犬
https://kakuyomu.jp/works/16818622172359571093『アガルタのイオリ』第123話 去りゆく人々
https://kakuyomu.jp/works/16818622176421206781/episodes/16818792440434832728