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『アガルタのイオリ』第122話 夏目漱石『夢十夜』

今回で火の山の戦いは終わります。
最大のクライマックスを終えて、今は気力が抜けて頭がぼんやりしています。

今回イオリは長い夢を見ます。
夢というか、イオリが見た(カミによって見させられた)のは「改変された現実」ですが、このパートを書くとき、ちょっとだけ夏目漱石の『夢十夜』を意識しました。
意識したのはいちばん有名な第三夜です。


「こんな夢を見た」
で始まる一種の怪談です。
語り手は六つの子どもを背負っています。
目がつぶれた青坊主の子どもで、言葉遣いは大人と同じ、語り手は自分の子なのにこの子を不気味に感じます。
どこかに捨てて行こうと思うと、それを見透かしたように子どもは笑います。さらに

「御父さん、重いかい」

と子は尋ねます。
重くないと答えると

「今に重くなるよ」

と子どもはいいます。

やがて道が二股に別れ、語り手は子どものいう通り左の暗い森へ向かいます。
雨の中暗い道を語り手は歩きます。すると

「御父さん、その杉の根の処だったね」

と子どもがいい、語り手は思わず

「うん、そうだ」

と答えます。
子どもはさらにいいます。

「文化五年辰年だろう」
「御前がおれを殺したのは今からちょうど百年前だね」

「おれは人殺しであったんだなと始めて気がついた途端に、背中の子が急に石地蔵のように重くなった」


これで第三夜は終わります。
ウソか本当かわからない子どもの話を
「うん、そうだ」
と肯定した途端、背中の子が石地蔵のように重くなる=人殺しの過去が現実になる。

「否定しなければならない夢もあるんだな」

と思って、それが今回のエピソードのヒントになりました。

夢十夜 夏目漱石
https://www.aozora.gr.jp/cards/000148/files/799_14972.html

『アガルタのイオリ』第122話 旅の終わり
https://kakuyomu.jp/works/16818622176421206781/episodes/16818792440041811421

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