『場所問題』
結婚して家をかまえた夫婦ならともかく、婚姻前の男女には、場所がない。
現代だって、恋人が家に遊びに来ても、親が在宅なら、いたす事はできぬ。
奈良時代の家屋なんて、部屋の間仕切りは、平民は、ない。
そして、さ寝は、「月が昇ってから」であり、「朝日が昇る前に」男は人に目撃されないように帰るもの、とされていた。
(昼間は家族ぐるみで、畑仕事など、あくせく働くのです!)
どうするか?
男は夜、女のもとに忍んでいって、女を家の外に呼び出し、お外、人に見られないところでいたすのです。
それしか方法がない。
女が乗り気なら、そわそわ、戸の前で待っててくれたんじゃないかな。
そんな女を言い表した素敵な言葉に、夜戸出《よとで》の姿、という言葉があります。
で、当然、親にバレバレ。
母親が「NO」と言って、男を叱って追い返す事もあったそうな。
母親が強い時代です。
さて、クジラ。
メユカが自分を受け入れる為に待っててくれる……。
その事を想像しながら、心浮き立つ心地で、月に照らされた郷の道を、メユカの家に歩いていく。
これって、男にとって、とてもワクワクする道行きだったんじゃないでしょうか?
「メユカはクジラに口づけする」
終話 「クジラ」
https://kakuyomu.jp/works/16818093079020393315/episodes/16818093079171012676