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蘭契ニ光ヲ和グ  佐野方は実にならずとも

蘭契ニ光ヲ和グ

第二章  「霜結ふ檜葉」
第十七話  恋者花耳 〜れんじゃくわじ〜



 日佐留売《ひさるめ》はゆっくり目を開ける。
 正面に立つ大川さまと、目があう。
 優しい目。

(く、口づけしてくださるかしら……?)

 緊張で息が苦しい。
 日佐留売は待つが、大川さまは、身動ぎもしない。

(……?)

 ただ、立っているだけ。
 ……動く気配がない。

(あ……!)

 日佐留売は待つ。まだ、待つ。
 大川さまが手をのばしてくれることを。

(……!!)

 大川さまは、優しい目を向けてくれてはいるが、それだけ。
 あたしを傷つけないように、否定する言葉は何も言わないけれど、……これは拒否だ。
 あたしに、その気はない、と、態度で言っている。
 大川さまは、動かない。

 動かない……!

 さ一夜さえ……!

「大川さま……!」

 堪えきれず、涙があふれた。






↓ここから、第十七話に戻れます。
https://kakuyomu.jp/works/16817330656106103583/episodes/16817330658578728286

8件のコメント

  • うう、なんだろ。
    むしろ、嫌だ、ダメだ、っていわれたほうが救いがあるのかな。
    大川さまの表情がやさしすぎて、なおさら、痛いのです……。
  • いちさま

    日佐留売、心が痛いです。
    ……イヤだ、駄目だ、って言われても傷つきますね。
    一晩、受け入れてくれる、以外は、どう転んでも傷つきます。
    これはしょうがないですね……。

    大川さまの表情、内面は嵐。ぐずりと蠢動する黒いものを自覚しながら、日佐留売をせめて傷つけないよう、泣き腫らした目で笑顔を浮かべています。
    難しい表情ですが、
    「優しい」
    に集約されます。
    うまく描けていると良いのですが……。
  • ううううつくしェェーーー!!

    ホント、加須さんの絵は美しいしエチぃ(失礼)ので大好きです❤️

    いや〜、女を泣かせる大川さま。イイデスネ〜(*´∇`*)
  • 虎の威を借る正覚坊様

    ウツクシェー!
    美しいしエチぃ、褒めていただき、ありがとうございます。(笑)
    女を泣かせる大川さまの微笑みです。
    罪作りです。
    コメントありがとうございました。

  • 日佐留売、こんなに愛らしいのになあ。
    三虎と同じ両親から生まれたとは思えない美女!(三虎に失礼すぎる!)

    でもだめなんですね、大川様の心の中には、あのおみながいるから・・・
  • 綾森れんさま

    日佐留売、清楚で愛らしいです。
    勇気をだしたのになあ……。
    でも大川さま、駄目なんです。悲しい……。

    三虎→顔のレベルは一般的だけど、大川と並ぶと見劣りがする。
    日佐留売→誰が見ても、美女だね!となる、わかりやすい美女。

    としたかったので、日佐留売と三虎はあまり似ていない姉弟になってしまいましたが、同じ血を分けています。(笑)
  • 大川様の背景にある紫色、ミステリアスな色ですよね。。。
    情熱の赤と、冷静の青が混じり合った色。
    やり場のない情動を持て余す赤と、必死に冷静さを保とうとしている青が混ざったような。
    そこに浮かび上がる、優し気な笑顔をたたえた大川様。
    この複雑な内面を持つ大川様を落とせる女性、かなり難しいですよね...
  • たけざぶろう様

    ありがとうございます。ありがとうございます。
    そう、大川の背景にあるのは、ミステリアスな、情熱と冷静と、持て余す激情と抑制がまじった色。
    その通りです。
    加須 千花、何も考えず、「大川さまのバックは密やかな紫〜。」と塗っていたのは秘密です。(笑)

    そう、この複雑な内面を持つ大川を落とせる女性、かなり難しそうです。
    今、たけざぶろう様に言われて、そうだよなあ、としみじみ思ってしまいました……。(;^ω^)
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