蘭契ニ光ヲ和グ
第二章 「霜結ふ檜葉」
第十七話 恋者花耳 〜れんじゃくわじ〜
日佐留売《ひさるめ》はゆっくり目を開ける。
正面に立つ大川さまと、目があう。
優しい目。
(く、口づけしてくださるかしら……?)
緊張で息が苦しい。
日佐留売は待つが、大川さまは、身動ぎもしない。
(……?)
ただ、立っているだけ。
……動く気配がない。
(あ……!)
日佐留売は待つ。まだ、待つ。
大川さまが手をのばしてくれることを。
(……!!)
大川さまは、優しい目を向けてくれてはいるが、それだけ。
あたしを傷つけないように、否定する言葉は何も言わないけれど、……これは拒否だ。
あたしに、その気はない、と、態度で言っている。
大川さまは、動かない。
動かない……!
さ一夜さえ……!
「大川さま……!」
堪えきれず、涙があふれた。
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