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魔法の呪文。童謡と反英歌。

十五年前くらいに一回読んだきりなので非常にあやふやなのですが、夢枕獏さんの安倍晴明の小説に式の話が出てくるんですよね。

言葉という象徴構造にあるものを、さらに圧縮・短縮したものを式と呼ぶ。

みたいなことを。
いや多分違うんですけど、当時の私の理解力で保持したことを言語化するとそうなりました。

物語内でそんな言語学みたいなことを延々喋る気はないので、物語を描き始めて以来、考えてきた事をここで好き勝手喋っちゃうんですが、抽象の概念を人間に獲得させるに至らしめた言語って、魔法みたいなんですよね。

魔法の呪文!

専門家ではない利用者にとって、おまじないと科学って似ていると思うんです。

非常事態に直面した時、どうして作用するのかは分からなくても、解決手段になりうることを試す。

科学的な手法やあるいは、魔法・まじないをブラックボックスに入力し、そこから出力される答えを観測し、それを理論化する。

私は熱を出した時、処方された薬を飲みますが、どうして効くのかは知りません。

今まで薬が効いていたという経験則。

そして、処方してくれたお医者さん、その教育を施した現代社会への知識、その知識を獲得するために積み重ねてきたであろう足跡へのうっすらとした信頼があるから飲んでいます。

おまじないも、信じている人にとっては、仕組みとしてはそれと同じなんですよね。



1.

最近知ったんですが*、エジプトには子供が熱を出した時に、生物学的な対処とは別に唱えるおまじないがあったんだそうです。

ベルリン3027の呪文集というものに記されているそうで、子供の命を攫おうとする目に見えない『それ』を撃退するための、命令形の二人称で書かれた言葉。

子供を守る。そのために子供のそばで大人は眠らない夜を過ごし、使える数少ない手段を使う。

現代人とは世界の切り取り方がちがうだけで、非常に合理的な方法ですよね。
言葉がそのまま呪文になっている!



2.

その意味では、歌も魔法ですよね。
メロディに乗っている分、さらに言葉が伝播しやすい。届く範囲が広ければ、作用する範囲も広がる。

ちょっと笑っちゃったんですが、歴史を見てみると、イギリスを目の敵にする国々の多いこと多いこと。
アイルランドに、スコットランドに、フランスに、それ以外の国々に。探すとあちこちで反英歌が歌い継がれています。

もちろん、そういう歌はどの国にもあるものではありますが。

アイルランドやスコットランドではそのまま反英歌として歌われているみたいですが、フランスでは今では童謡になったりしている。

フランスの童謡を聞くと結構おもしろいんですが、子供たちが歌っているのによくよく歌詞の意味を聞くと、なんかとんでもないこと歌ってんな、ってなることがちょくちょくある。

歌を作るのってそこそこコストが高いことだと思うんですよね。
それでも伝えたいことがあった。残したいことがあった。

それが分散した形で伝わるのではなく、歌という一つの塊をもって世界に固定された。

意図はちがいますが、『花は咲く』も同じ作用のある歌だと思います。

それは歌うことで作用し、伝播する。
歌が発動の呪文みたいになっているんです。
魔法的ですよね。



でもその魔法って完璧なものじゃないから、時とともに綻んだり、形を変えたりしてきてしまうんです。

でもそれって、とっても人間らしくて、おもしろいですよね。こうあって欲しい、と思ったものでも、一つの形に保持しておけないところがある。

そもそも言葉だけじゃなくて、人間が行う儀式や生活様態、文化というのも魔法みたいな要素がある。この間、人生で初めて結婚式に行っていろんな形式・儀式を見てきて、切にそう思いました。

声に出す。
反復する。
体を動かす。
なにかを同調させる。

そうしたものには結びつけたり、属するコミュニティという世界に宣言したり、あるいは(結婚式ではないけど)切り離したりする機能がある。

たぶん、これって非常に魔法に対する古典的な見方な気はするんですが (知らないけど)、私の魔法観ってこんな感じです。

社会学とか人類学あたりで、魔法っていう語彙ではなくても、山ほど研究されてきているんだろうなという気はするんだけども!

皆さんにとって、魔法とはどういうものですか?


* https://www.youtube.com/watch?v=Zm76cBiQFK4

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