以前、過去にまとめた自分の詩集を題材にして『組曲モルフォ』という短編連作を上梓しました。二十編の詩をもとに、そこから浮かび上がる情景を短編小説として編み直すという書き方を試したんですが、書いているわたしもなかなかおもしろいなと思ったんです。
でも元ネタの詩があると、必ずそれによる制約を受けるんですよね。もうちょい自由度を上げたいなあという不満が残りました。それと、元の詩には『青い蝶』という共通モチーフがあっても全編を貫く支柱がありません。その分、いささかとっ散らかった仕上がりになっています。
なので今回、状況設定とナレーター、メインテーマを固定した上で、思考や感情を自由に揺らすという別のアプローチを試してみることにしました。
下敷きにしたのはえとわの第1236話『丘』です。シチュエーションはほぼ同じです。どんな話か。まあ、わたしの書くものですからとっても変な話です。
舞台は、全面的に宅地化された丘陵地の一角になぜかぽつんと残っている一ヘクタールほどの小さな野原。私有地です。東京近郊を想定して書きましたが、場所は特定していません。多摩丘陵南辺というイメージかな。
野原を父親から相続した佐々木信郎(ささき のぶお)という五十代半ばの男が、ナレーターを務めます。その構図は全話共通にするつもりです。
登場する人物は、いろいろあってもごく普通の人たちです。普通じゃないのは、佐々木が持っている土地の方。どう普通じゃないかは、えとわの元ネタを読んでくださればわかります。
舞台となる野原はヘンですが、話自体はギミックのない直球になると思います。
一話あたりの長さや印象はその都度変わります。字数は五千字から二万字の間くらいかな。適当な文量で区切り、分割アップします。アップは不定期。書けたらアップというスタイルで、何話で打ち止めにするかも決めていません。これからお届けする第一話は、背景説明が主になるのでちょっと退屈かも。
全くもって派手さのない、でも読み捨てることのできない、答えのない問いを並べた話にしたいなと思っています。忘れた頃にぽっと載せますので、都度お読みいただければ幸いです。
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以下、余談。
タイトルなんですが、永遠を「えいえん」にせず「とわ」にしたのには、ちょっとばかり訳があります。漫画家逢坂みえこさんが描かれた青春漫画の『永遠の野原』ともろにかぶってしまうからなんです。
逢坂さんのタイトル作はわたしの大のお気に入りで、リアルタイムで雑誌を買って読んでいましたし、コミックスも全巻揃えました。
ただ、本作は逢坂さんのタイトル作とはまるっきり内容が異なります。主人公はおっさんですし、舞台は曰く付き。アクションの乏しい内省的な(ある意味辛気臭い)展開になると思うので、逢坂作品のオマージュにはなりえません。ですので、漢字表記は同じであっても読みだけは変えようということで、とわののはら、になっています。
英語表記にすると違いがわかりやすいかな。
逢坂さんのはeverlasting fieldという感じ。ずっと色褪せない野原という印象です。主人公二太郎が愛犬みかんを遊ばせる無邪気な光景を、ずっと変わらず原風景に置いているというイメージですね。
それに対し、これからわたしが展開するお話はeternal field。文字通り、永遠に野原、です。
まあ、あとは読んでいただいて、ですね。プロットを固めず思いついたら書くスタイルになりますので、印象が都度ばらつくかもしれません。それも込みで味だと思っていただければ。