• SF
  • 恋愛

「鮮紅のロンギヌス」ひとり反省会

 今年の反省は今年のうちに。というわけでやっていきたいと思います。前回の近況ノートで言及していた「ロンギヌス」の反省会を。
 作者自ら作品に対してネガティヴなことを語るのもどうかと思わないでもないですが、問題点を洗い出すことで今後の糧になれば……


◯「過去編」を切り取るということ

 前回の近況ノートでも触れましたが、「鮮紅のロンギヌス」はもっと前から構想していた別の物語(仮タイトル「灰より生まれ」)の登場人物の過去編を膨らませて仕立てたものです。
 言うまでもなく「過去編」を一つの独立した物語にしようと思ったら、その中で世界観や設定の説明を済ませなければなりません(少なくともある程度は)。その情報の取捨選択が上手くいかなかった部分が多分にあったかなと。
 例を挙げると「黒曜連合」がどういう思想の組織かという点です。本作でロゼリアの復讐の対象になるのはあくまで〈徴税人〉で、この組織は政治的信念を持たない山賊なので、黒曜連合の思想を作中で語る必要はないという判断でしたが、結果的に10万字を超える長編になった以上、どこかのタイミングでそこには触れておくべきだったと思います。
 逆にルミナスの説明はあれで十分というかむしろ多すぎたくらいですね。どうにか文量だけでも削りたかった。


◯「過去編」を切り取るということ②

 元になる長編から過去編を抽出して独立させたせいで、本作だけを読んだ場合何の意味があるのかよくわからない設定が散見されるのも悩ましい問題ですね。例えば物語の舞台が西暦2051~2053年であることの必然性がこの物語単体では感じられないことでしょう。パワードスーツ以外でもっと自然に21世紀半ばらしい描写ができればまだよかったのですが……


◯能力バトルにならないなんて

 ルミナスの設定は「灰より生まれ(仮)」の方で重要になるもので、「ロンギヌス」の方でも小柄な少女が屈強な男たちを大勢相手にして戦うことに説得力を持たせるために必要なものだったと思っています。……が、この設定があるのに「同じ異能力を持った相手とのバトル」をやらないの、私が読者の立場ならはっきり言って作者の正気を疑います。
「灰より生まれ(仮)」の方では複数の能力者が登場して戦いを繰り広げますし、「ロンギヌス」の第二部でも能力者(黒曜連合の創設者)との戦いはあるのですが……やはり第一部のみで一つの作品として一旦完結させる以上は、尺を伸ばしてでも一度は能力者同士のバトルはやるべきだったかなと……政府軍や敵対する別の反政府ゲリラにルミナスの使い手が一人くらいいても違和感はないですし。


◯アクション描写は空気感を大事に

 アクション描写、頭を悩ませる方は多いんじゃないでしょうか。矛盾がないように細かく設計しようとはしていても、動作の流ればかりを気にしてともすれば「ただの動きの説明」になってやしないか……
 極論動きの描写では結局画(漫画・映画)には勝てないので、地の文でもっと雰囲気を盛り上げる必要がありましたね。小説指南ではよく「説明ではなく描写をしろ」と言われますが、これはアクションシーンでこそ心がけるべきでしょう。


◯情景の不足

 近未来が舞台の本作では、アフリカの実在する国にネガティヴなイメージを付与したくない(何せ最悪なことばかり起きる物語ですから)という思いがあり、どの国の出来事なのかはわからないようになっていますが、ある程度どの辺りの地域かは設定していたので、もう少し気候や植生、食べ物などの具体的な描写ができたのではないかという反省があります。


◯スロースターター

 近況ノートの「新作について」でも言及していますが、第1話の中で、会話で設定情報を小出しにしていくこと自体は構わないんですが、その会話をしているのが主人公の父親とモブの運転手というのはまずかったなと……ただ早い段階で開示しておきたい情報というものは確かにあり……
 いっそ主人公のロンドンでの平和な学校生活なんかを第1話に持ってくるという手もありますが、それではますます話が動き出すのが遅くなりスロースターターぶりに拍車がかかることに……
 どこから物語を語り始めるか、設定はいつどうやって開示するか、どちらも本当に難儀な問題です。


◯「Interlude」

 半分以上書き上げていた本作を大幅改稿しながら少しずつカクヨムに投稿していくことを決めた際、新たに付け足すことにしたInterludeパートですが……これを蛇足と感じた方もいたのではないかと……ただ本編18話「家路」を小説のラストにするのもどうも据わりが悪く……
 物語にどのような結末を与えるか。そして小説をどんな一文で締めくくるか。これが上手くハマると「これ以外のラストは考えられない」という締め方ができるんですが(『トゥモロー・ネヴァー・ノウズ』の各話ではそれができていたと思っています)……キレのいい、かつ余韻の残るラスト一文をどうにか捻り出したいものですね。


◯今更タイトルの話

 あまりにも今更な話ですが……タイトル、「鮮紅のロンギヌス」ではなく「紅のロンギヌス」の方がよかったかも……? 「くれないのロンギヌス」より「せんこうのロンギヌス」の方が語感がよいのと、「紅」だとカーマインではなくクリムゾンになってしまうので「鮮紅」にしたんですが、「鮮」の字面があまりかっこよくない気もするんですよね。お魚っぽいというか……

◯「断頭」隊

 しまった! ちょうど『葬送のフリーレン』アニメ放送時期と被ってしまい、「断頭台」と見間違えやすい!


 他にも色々至らなかった点はあるかと思いますが、すぐに思い出せるのはこの辺りですね。
 目に見える欠点は即ち改善の余地。これらの反省を次回作に活かし、もっと読者を楽しませることのできる物語を作れるよう精進したいと思います。来年もどうかよろしくお願いします。

1件のコメント

  • 今年ももう少しですが。
    「あとがき」大好きなので、これ嬉しかったですにゃ〜。
    どのお話も私は「え、そうなんですか!?」みたいに感じちゃいますが。(確かに鮮魚感はあるかも(笑))
    作者様方の細やかな……作業、試行錯誤、違うにゃ、なんていうのかな?作品をより良い物にするための努力、すごいなぁと思っております。

    来年からも、楽しみにしております。
    良いお年を!
コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する