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薬師丸ひろ子「Wの悲劇」

 自分自身の最も悪い性格「面倒くさがり」を直そうと努力を始めた。好奇心が湧くとすぐに行動してしまうのに、普段は何もかも面倒に思えて何もしない。明日すれば良いことは時間が有ってもしない。とくに最近はまさに「怠惰」を楽しむようになった。TVドラマを無駄に録画しては、日がな一日ボーッと居眠りをしながら見ている時間が長くなった。孫娘に刺激を受けて、匿名でいろいろと書いていたが、それも次第に面倒になっていた。

 数日前に、薬師丸ひろ子の「Wの悲劇」を見た。高校の1年先輩の、舞台女優を目指していた人のことを想い出した。いま書いている「ポニテとヒカガミ」の先輩のことだが、50年以上前に二度と会うことが出来なくなってしまった、その少し前に下宿に行き、長い時間を過ごした。高円寺駅で別れるとき、今度の講演が終わったら止めて帰りたいと言っていた。横を向いたまま、帰ったら付き合ってくれる、などと言っていた。映画の中の薬師丸ひろ子のような半袖のシャツで、蒸し暑い部屋で長い時間居たので二人とも汗をかいて、なのにその汗でべたつく腕をはり付けたまま、電車の来るのを待っていた。

 何とか先輩のことを想い出して書こうとしたのに、ただ冗漫になってしまい、面倒になっていた。あんなに親しかったのに、学校を抜け出して土手で菓子パンを食べたこと、廊下で立ってるとソッと来て膝カックンをされた、下校の時にヘッドロックをされ外そうとして先輩の腰が細いのを感じた、下宿での先輩は幾つも離れた年上になっていた、駅で寄り添っていたときは怯えた子供のようだった、なのに顔が思い出せずに書き進めない。

 面倒ということに任せ、先輩のことを何かに残さなければ、きっと自分の最期の時に悔いが残るだろう。あの映画、見なければよかった。下宿でのこと、きっと辛いことがあったのだろう。あの時にもう少し大人になっていたら。

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