毎日、何もしないで、何かをしなければと思いつつも、何も出来ずに時間ばかりが過ぎてゆく。
生きている今の時間軸から見る世界は「死」へと向かう道だが、ある時点から突然、見る方向が変わってしまった。「死」から今の時間を見るようになった。「死」へ向かう夢と焦りと、物欲も何も視点が変わると、本当に欲しいモノや、やりたいことの重要性や順位など、どうでも良くなる。
好きでもない相手に同情で結婚をし、義父母のパチンコ依存症のために家庭も壊され、憎しみで生きてきたが、化け物の面相の死に顔を見て生きる気力を失った。周囲からの祝福を受ける事もなく、ムダな人生を送ってしまった。
あの化け物顔を見て、少しずつ視点が変わってきた。老いたのか・・・。
遠い思い出の中の人達が、何もしないでいると頭の中へ遊びに来る。くびれた腰や弾力のあるポニテ、うつ伏した時の腰から足首へと伸びた白い肌。そんな先輩の顔が浮かばない。
ガン病棟で知り合った多く人達、すでに10年が経ち、皆亡くなってしまっただろう。あの人達の、あの時の想いや訪れることのない明るい未来、どう捉えたら良いのか。
短命と言われた自分が後期高齢者になろうとしている。常に側で見守っていたネエ達も、一人しか残っていない。
面白い物で、最期に思い出すのは厳しかった父親と、いつも優しく見守っていてくれた47歳で逝ってしまった母のことだ。そして古神道を教え修行させてくれた祖父、仏教を教えてくれた菩提寺の住職。ムダに過ごした時間が半分を超えてしまったが、それにも増して実は誰よりも恵まれた生き方をしていたのかもしれない。