• 現代ファンタジー
  • 詩・童話・その他

行動が起こせない

 自分自身のメンタルの弱さを感じる。自営の時から、様々な状況に対応し切り抜けてきた。それが今回は何ともし難い状況になっている。

 妻の両親、義父母のパチンコ依存症によって、家庭は壊されてきた。4月の妻の死後、半年で義父が栄養失調から認知症になり、入院するも年末には死亡した。その死に顔は痩せて、木彫りの亡者のようで、面の皮は横にずれて目の位置が合わず、化け物そのものだった。葬儀では宗教活動をしていた頃の会員が一人も来ず、親戚さえも来なかった。

 あれから10年、一切の付き合いを切っていたら、パチンコも出来なくなり認知症というよりも、まさに狂ったババアとなり、義弟が特養ホームに入れた。結婚以来メチャクチャにされた災害の原因は義母で、この人の苦しむ顔を見なければ、骨になったら骨壺に犬の糞を入れ、墓石に小便を欠けなければ腹の虫が治まらないと思っていた。

 その義母に死に顔は、削りすぎた般若の崩れた能面のようだった。義父以上に化け物顔、黄泉の国の死神の面相を思わせる、恐ろしいほどの苦しみや憎しみや卑しさなど、あらゆる見下し嫌い二度と見たくないほどに酷い悪形相だった。

 人の死に顔は何度も見てきた。父の名代として、多くの親族の葬儀にも出てきた。死に顔は時間を経ると緩み、病で苦しんで亡くなっても、葬儀までには安らかな顔になるものだ。それが生前以上に恐ろしい形相に変わったのは義父であり、その義父以上に既に獄卒の責めを受けている、無間地獄に墜ちた苦しみの形相の義母の顔は、報復は考えられなくなった。

 40年以上も続いた憎しみが、あの形相を見た一瞬で消えてしまった。憎しみや恨みは、時に生きる力になるようだ。妻の死後生きてる姿を見たのは一度きり、認知症も進みヘラヘラとノンビリと暮らしていた。痩せ衰えたとはいえ、ごく普通の老人のように介護を受け、ユッタリとしてる姿が、どうしようもないくらい憎しみが湧いてきた。あの死に顔を見て、この世では見られない苦しみの顔に、憎しみが消えて、生きる気力もなくなってしまった。

コメント

コメントの投稿にはユーザー登録(無料)が必要です。もしくは、ログイン
投稿する