『無彩色の夢』《番外編》むぎによる「神の観測の説明(マニアックver)」

※こちらは『無彩色の夢』第3章 6.神の観測 の詳細説明の番外編です(9/9公開予定!)。
また、むぎの言う『図』は本文の一番下に載せられています。


 本編の説明に入る前に、まずは量子の特性についてむぎに教えてもらいましょう!

 さあ、皆でむぎを呼んでみよう!せーのっ!

「むーぎーー!」

「はーい、むぎなのじゃ!」

「むぎお姉さん、量子ってなーに?」

ーーここから真面目に書きますーー //作者コメント

「一言で言うなら、原子よりも遥かに小さな物質のことじゃ」

「量子の特性について説明するにあたってシュレディンガーの猫という例えが分かりやすい例じゃから、それを使って説明するのじゃ(一部改)」

「まずは下の図の1を見るのじゃ。箱の中には猫さん、謎の気体入った風船の2つが入れられる。風船は毎秒確率で割れるものとする」

「むぎ先生! 謎の気体って何ですか?」

「謎の気体は文字通り、動物が吸い込むと何が起こるか分からんのじゃ。もしかしたら死ぬかもしれないし、身体が急激に変化してムキムキなネコさんに変身するかもしれない」

「まあ、そんなことどうでもよいのじゃ。まず図の1では、人間が箱の中を観測している状態じゃ。箱の中には当然、ネコさんと割れていない風船がある」

「図の2では、箱に壁を立てて人間が箱の中を観測できなくした。続いて図の3に行くのじゃ。この状態では人間は箱の中の状況は分からない。つまり箱の中は様々な可能性に取り巻かれている。風船が割れずに最初の状態から変化していないかもしれない(A)。風船が割れて謎の気体が箱の中に放たれ、ネコさんが気体を吸い込み、ネコさんの身体が急激に変化してムキムキになっているかもしれない(B)。風船が割れて謎の気体が箱の中に放たれ、ネコさんが気体を吸い込み、ネコさんがお亡くなりになっているかもしれない(C)。この(A)~(C)が可能性じゃ」

「そして最後の図の4じゃ。壁を取り払って中を観測したことによって、箱の中の空間を取り巻いていた可能性が瞬時にひとつの可能性に確定する。今回の場合は(B)の可能性がたまたま選ばれたみたいじゃな」

「では改めて量子について、ざっくりと話していくのじゃ。雛とゆいとが置かれている状況を理解する上で重要な部分は図の3から4の部分じゃ。量子の世界では、物体を観測していない状態では、物体は幾つもの可能性に取り巻かれている。じゃが、物体を観測した瞬間に物体の状態はひとつに確定するのじゃ。とりあえずこのことだけを覚えておけば十分なのじゃ!」

「おお! むぎ先生! とても分かりやすい授業でした!」
※ゆいとは何一つ理解していません。

 むぎは大きく息を吐き、口を開く。

「ゆいとよ、この『先生』とやらは何なのじゃ? やりにくくて仕方がないのじゃ」



「むぎ先生、お茶をお持ちしました」

「うむ!」

 僕は淹れたてのほうじ茶(ペットボトルのほうじ茶をレンジでチンしました)をお盆に乗せ、むぎの前まで持っていく。素手で湯呑みに手をかけ、むぎの前のテーブルにゆっくりと置いた。

 あ、熱かった…。これ持つのは5秒が限界だな。待てよ、確かむぎって猫舌だったような気がする。これ知らずに飲んだらやばくないか?
 そんなことを思いつつもむぎの反応が気になり、このままにしておくことにした。

「神は遥か高次元に存在し、銀河、いやそれ以上の規模を観測する神からすれば地球如きの世界線なんぞ量子の如くちっぽけなものなのじゃ」

「先程地球における量子の考え方は説明したのう。量子の世界では、人間が対象の物質を観測していない状況では物質の状態は幾つもの可能性に取り巻かれている。じゃが人間が物質を観測した瞬間、幾つもの可能性に取り巻かれていた物質はひとつの可能性に収束し、状態が確定するのじゃ」

「ではこれを神視点で考えてみよう。地球の世界線なんぞ神からすると人間からする量子同然の大きさ、つまり先程の量子の考え方がそのまま世界線の剪定に適応されるのじゃ。神が世界を観測していない間は、世界線の可能性は幾つもの可能性に取り巻かれる。神が世界を観測した瞬間、可能性のひとつが選ばれ、選ばれなかった可能性の世界線は消し去られる」

 むぎは大きく息を吐き、リラックスする。

「ここまで文字がぎっしりで疲れたじゃろうが、もう少し頑張るのじゃ!」

 むぎが出されたお茶に手をかける。後はお察しの通り…。

「あっちっ!! なんじゃこれ! このお茶の温度どうなってるんじゃ」

 いやー、温度がどうとか言われてもねぇ。電子レンジなんかじゃ温度調節なんてできませんよ。僕はペットボトルのほうじ茶を湯呑みに移して、ポチッと500Wで2分間レンジを回しただけですから。

「ひはー、ひはがひひひひふるんじゃ…」
翻訳)
「雛ー、舌がヒリヒリするんじゃ…」

「はいよしよし、ヒリヒリするね」

 むぎが雛さんにまるで赤子のように泣きつき始めた。雛さんはむぎの頭を優しく撫で、むぎという名の赤子をあやす。



「こほん! では説明の続きといこうかの」

 むぎ、さっきまでのことを無かったかのように振舞ってやがる…。

「雛とゆいとが置かれている状況と照らし合わせて見ていくのじゃ。現時点では神の観測前、つまり世界線はゆいとの居る世界線、雛の実体が存在する世界線の2つの可能性に取り巻かれている。そこで神の観測が起こるとどうなるのか考えていくのじゃ。観測が起こると、ゆいとの居る世界線と雛の実体が存在する世界線のいずれかの可能性が選ばれ、選ばれなかった可能性は消し去られる」

「以前の話と被るが、ゆいとの居る世界線が選ばれれば雛の実体の存在する世界線が消され、雛の実体が消滅し、雛は実質的な死を迎えることになる。逆のパターンの場合は、ゆいと含む世界線の存在が全て消し去られるのじゃ」

「はひ、やっぱり舌が痛いのじゃ」


「これで神の観測の解説を終わりにするとしよう。何か分からないことがあれば遠慮なく下のぺコメ? とやらに書き込むのじゃ。このむぎがお答えするのじゃ!」




☆図はむぎ作です☆

//補足
シュレーディンガーの猫はあくまで《《思考実験》》です!

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